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できない理由を挙げていた
社員のマインドにも変化
お客様の声や不満を調査して、改革に活かしたそうですね。
「なぜ銀行は3時に閉まるのか」「自分のお金を引き出すのにどうして100円もかかるのか」「待ち時間が長い」。さまざまな疑問や不満が寄せられ、2004年1月に「待ち時間ゼロ運動」を始め、4月にりそな銀行と埼玉りそな銀行の営業時間を午後5時まで延長しました。
お客様を待たせない、書類を書かせない、ハンコを押させないの「3ない運動」と、銀行側のペーパーレス、キャッシュレス、バックレスの「3レス運動」を並行して続けました。いまでは、ハンコなしで土日・祝日にも口座開設ができ、融資が受けられるセブンデイズプラザを開設したり、営業時間が午後1時から9時までの支店を誕生させたり、グループ銀行間の振り込みが24時間365日・即時決済できるシステムもつくっています。
業績が回復した後の気の緩み、巻き戻しはあったのですか。
V字回復した後の気の緩みについて、細谷は危機感を持っていました。役員の任期を1年にし、本気を出さないとクビになるという危機感を持たせました。りそなをどう変えていくのか、役員、幹部、社員はチャレンジを常に求められました。
業績が回復し、報酬カットの改善などが行われ、組織に安堵感が生まれていると感じた細谷は、アメリカでIBMの再建にらつ腕を振るったルイス・ガースナー氏に意見を求めたそうです。
「黒字化が見えてきたが、改革のテンポが遅くなった気がする」と話すと、「IBMもまったく同じだった。従業員が昔に戻りたがる。それを防ぐのがリーダーの役割だ」と言われ、「企業文化、社風を変えること。永遠に業務改善を続けさせることが大事だ」とのアドバイスを受けました。細谷はガースナー氏の考えに共鳴し、改革の手綱を緩めることがありませんでした。
2012年11月に細谷さんが病気で急逝され、翌年4月、東さんがりそなHD、りそな銀行の社長に就任されました。
細谷の経営改革をいっそう深化させ、公的資金を完済することが私の使命だと表明しました。返済は困難だろうと、銀行業界内でもささやかれていましたが、返済計画の2年前倒しで、2015年6月に達成できました。これからも「お客さまの喜びが、りそなの喜び」という経営姿勢で、質の高い、役立つサービスを提供したいと考えています。
りそなは「銀行ではなく、金融サービス業」と宣言されていますね。
このようなサービスをやったらどうかと提案があっても、これまでは銀行法第何条に反するのでできないと、できない理由を挙げていました。新しいことをやろうとしても、なかなか進まないのはどこの企業にもあることですが、りそなは随分変わりましたよ。
グループ銀行間の24時間365日の振込決済システムも、システム部門が「やりましょう」と積極的に動いた。フットワークのいいカルチャー、企業文化が根付いているところが、りそなの強みだと思います。
土日も営業しているセブンデイズプラザ、午後9時まで営業している店舗など、提案は現場から出てきます。店を開けただけでは、お客様は来ない。来ていただける仕組みをつくらないといけない。
ショッピングセンターの中でオープンするケースなどでは、保険商品も取り扱っており、買い物のついでに相談もしやすい。いろいろなアイデアを現場が考えて、やりたいと言ってくる。お客様に感謝され、実績が出ると、充実感が生まれ、自主的にやってみようということになる。
午後9時までの営業になると、労働時間、シフトを組み直す問題がありますが、それは午後1時に店を開けることでクリアしようと。新しいサービスを提供するため、どうすればいいか考えていくわけです。
土日や午後5時から7時に利用されているお客様の77%は現役層です。一般的な支店では、50代以下の現役層の来店は35%。当たり前ですよね。いくら午後5時まで店舗を開けていても、現役層のお客様は来ることができません。