周辺国家の軍事力向上と
DX技術の進歩への対応迫られる

――政府は新しい国家安全保障戦略の議論を夏から始め、年内にまとめる予定です。新戦略のポイントをどう考えますか。

 今の安保戦略は2013年に作られたが、当時との大きな違いは米中新冷戦の激化だろう。並行して中国のほか、北朝鮮やロシアという日本の周辺国家の軍事力が量的にも質的にも変化している。

 この地政学的な要件に加えて、デジタルトランスフォーメーション(DX)技術の進歩があり、この2つの変化の下で日本の安全保障をどう確保していくかが突きつけられた課題だ。

 トランプ政権が対中強硬策にかじを切る前は、尖閣問題などを抱えていた日本の方が、米国より中国の膨張に対する危機意識が強かった。

 米国はオバマ政権の時はなかなか戦略転換ができなかったが、トランプ政権では時にやり過ぎと思うぐらいの対中強硬姿勢に転じた。国防総省も「インド・太平洋戦略」という報告書を出しており、中国との競争が戦略の基本になっている。

 中国は軍事力増強だけでなく、「軍民融合」といって、軍事用も民生用も一体で技術開発を進めている。かつては軍事技術のスピンオフとか、民間技術の軍事転用とかがあったが、その壁を取っ払って、軍や企業、大学が一体で先端技術開発に取り組んでいる。5GをはじめバイオテクノロジーやAI、ロボットなどあらゆる先端技術が軍事的に運用される時代に対応していかないといけない。

――技術進歩で防衛戦略も変わるということですか。

 DXの世界では、これまでの戦車や空母、イージス艦を中心にした重厚長大型のプラットフォームをしのぐ勢いで軍事革命が起こっている。

 例えば、破壊力の大きな爆弾を積んだ小型無人機とか小型潜水艦などをスワームといって一度に大量に投入して攻撃する。イージス艦などの高価な装備では被弾したら替えが利かないが、小型の無人機なら撃墜されてもまた増強できるし、コストも安い。

 さらに兵器も戦闘機や迎撃ミサイルのようなキネティック(運動性の兵器)から、サイバー戦やレーザー、電磁波といったノンキネティック(非運動性)なものが出てきて、軍事安全保障は宇宙、サイバー、電子戦という新しい領域に広がっている。

 従来の陸海空の3次元のプラットフォームから将来はこうした領域が主戦場に移っていくということもいわれている。日本の場合、宇宙部隊にしても誕生したばかりで、こうした技術革新と地政学的な変化を融合させた総合戦略をいかにつくり上げるかが大きなテーマだ。