いまだ終息の見通しもたたない新型コロナ禍は、世界規模で多くの人を不安や苦境に陥れ、経済を破綻させつつある。しかし、人類はこれまで、感染症のパンデミックを何度も経験している。そのたびに先人たちは大きな犠牲を払いながら乗り越えてきた。歴史は常に繰り返している。過去をひもとけば対応策も見つかるのではないだろうか。今回は、わかりやすい解説で定評のある歴史研究家・河合敦氏の新刊『繰り返す日本史』(青春出版社)から、現在の「コロナ禍」と似た状況だった明治時代の「恐露病」について紐解いてみよう。
日本人は“危機的状況”とどう向き合ってきたのか
新型コロナウイルスによる感染症のため、わずか数カ月前とは、世界が変わってしまった。そして、この感染症は今も各地で猛威をふるっている。
この新型コロナのたちの悪さは、人の命を奪うだけでなく、経済をめちゃくちゃにし、人間の心をすさませることである。この未曾有ともいえる危機に直面し、歴代最長の安倍晋三内閣の初動は、あまりにひどすぎた。
国民一人に布マスク二枚配布、しかも2カ月経っても届かないという対応の遅さ。「低所得者層に30万円支給」から一転、「国民1人に10万円支給」への変更。異常なほどのPCR検査数の少なさ。強引な検察庁法改正案の提出とその破綻…なぜ後手後手の対応や批判を浴びる政策を打ち出すのか、不思議でならない。