新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のワクチン開発競争で、900年の歴史を持つ英オックスフォード大学が注目を集めている。同大学のジェンナー研究所は株式が公開されている多くの大手製薬会社と競い合っている。各社の投資家たちは有効な製品が開発されれば大きな利益を得る可能性がある。
オックスフォード大のワクチン開発でも、さまざまな投資家が製品の成功から利益を得ようと待ち構えている。投資家の中には、同大自身のほか、研究の中心となった同大の2人の科学者、ドイツ銀行の元株式トレーダーが昨年設立したほとんど無名の投資会社が含まれている。
英国政府はこのワクチン開発の中核技術を握るバクシテック社に、500万ポンド(約6億8750万円)を投資している。この投資についてよく知る人物らが明らかにした。バクシテックの最大の投資家となっている企業オックスフォード・サイエンシズ・イノベーション(OSI)には、華為技術(ファーウェイ)の投資部門子会社を含む幾つかの中国資本も投資している。
このように投資家が複雑に絡み合う構造は、科学分野のイノベーションにも経済的利害がしばしば関わっているということを如実に示している。企業や投資の世界から遠く離れているように見えるオックスフォード大のような組織でさえ、それは例外ではない。
20世紀前半、オックスフォード大の学者らは、研究所のさまざまな容器内の物質から人間の治療用のペニシリンを初めて精製し、細菌性の感染症の治療に革命をもたらした。同大のコロナワクチン開発プロジェクトは現在、一握りの有望な取り組みの1つに数えられている。競争相手はファイザー、モデルナなどの製薬会社や、中国とロシアの国家や軍を後ろ盾としたプロジェクトで、それぞれ臨床試験が同様に進んだ段階にある。