のど薬、スプレー品切れ「うがい薬買い占め」騒動の原因は、本当に吉村知事にだけあったのだろうか Photo:Diamond

「うがい薬」が街から消えた
騒動の原因は何だったのか

「ポビドンヨードうがい薬、売り切れました」

 2020年8月4日18時、私が近所の薬局を通りかかったときに見かけた表示です。きっかけは、この日14時に大阪で行われた吉村洋文府知事の記者会見でした。

「コロナの陽性者が減っていく」と吉村知事が明言する映像を私もニュースで見ましたが、これは明らかに情報の「伝言ゲーム」のミスでした。

 同じ会見でその根拠となる研究成果が発表されたのですが、会見で研究者が発表していたのは、「府の宿泊療養施設にいる41人の新型コロナ軽症患者に、イソジンなどのうがい薬の成分であるポビドンヨードで1日4回うがいをしてもらったうえで、毎日唾液によるPCR検査を行ってきたところ、4日目に唾液中のウイルスが目に見えて減少してきた」というものです。

 この会見を受け、うがい薬大手の明治ホールディングスの株価が急騰すると共に、薬局の店頭からうがい薬が売り切れてしまうという現象が起きました。そして、メルカリでは早速、医薬品ではないうがい薬が5000円の高値で取引されるという事態になります。マスク、トイレットペーパーに続く、「買い占め」現象が起きたわけです。

 この記者会見に対する批判的な医学関係者の反論をネット上で見つけることができますが、うがい薬の効果はあくまでうがいをした箇所にあるウイルスや細菌を殺すものでしかない、たとえば、のどをうがいすればのどが殺菌されるだけ、ということです。

 手を石鹸で洗えば手に付いたウイルスが死ぬのと同じで、ポビドンヨードでうがいをしたら口の中のウイルスの一定数を滅らすことができる。ですから「唾液を使ったPCR検査における陽性反応者の数が減る」のは当然です。

 そもそも唾液を使ったPCR検査は、その判定が難しいことも知られています。陽性判定数が減ったとしても、陽性患者の体内でウイルスが消えたわけではないということが、批判的な意見におけるポイントのようです。