移住とは、その地域に新たに参加することなのだと、肝に銘じておくべきだろう。

「お試し移住」の
「イメージアップ作戦」

 ならば、いきなり移住しなくてもいいから、「まずはその土地を知ってもらおう」「生活を擬似体験してもらおう」「実際にその土地で仕事をすることを体験してもらおう」と始まったのが、「ふるさとテレワーク」や「お試しサテライトオフィス」である。

 いずれも、人口減少が進む地方都市にWi-Fi完備のコワーキングスペースのような簡易なオフィスを設けるか、関係団体や地元地方公共団体がこれを整備し、そこを大都市の企業の出先と位置付けて希望する社員を一定期間派遣又は期間限定ではあるが実際に移住してもらうというもの。もっとも、そうしたサテライトオフィスに大都市からやってくるのは数人から十数人程度。要は出来るところ以前に、これに魅力を感じて参加する企業・従業員はかなり限られているということの表れであろう。

 しかし、移住者を増やすことに躍起になる一部の地方公共団体は、ただ単に働くだけではなく、「その土地を楽しんでください」「午前中は仕事をして午後は遊ぶみたいなことも出来ます」といった触れ込みで人を呼び込もうとした。

 それに当たって使われるようになってきたのが、ワーケーションである。

 つまり、「お試し移住」の人数を増やすため、人が来てくれない地公体が来てもらえるようにするための「イメージアップ作戦」の手段として使われたようなものであるが、当初は観光という意味は含まれず、そのコンテクストでも使われてはいなかったわけである。

 それ以降、移住推進に関連して徐々に使われるようになっていったが、この言葉が個別具体的に意味するところは話者によって微妙に異なり、カタカナ語であることから来る言葉自体の定義の曖昧さと相まって、それが今回のような拡大解釈というか「都合のいい使われ方」につながっていったのであろう。

魅力を感じる企業や人は
限られる

 さて、このワーケーション、前掲の「ふるさとテレワーク」などへの参加者数が限られていることからも、馴染む仕事が相当限られること、そしてこれに魅力を感じる企業や人は限られることが明らかである(テレワーク自体がそうなのであるから、当然といえば当然であるが)。