そこで想像していただきたい。この企業の社員たちはラクになっただろうか。答えはノーだ。丸投げとはいえ、仕事を委託するわけだから、基本的にはマネジメントはこちらがやらなくてはいけない。委託先から報告を受けて、その情報を集約するという新たな仕事も生まれる。つまり、どんなに下請けを活用しても、さばくことができる仕事量には限界があるのだ。

今のままで検査を増やせば
間違いなく破綻する

 保健所におけるPCR検査の委託もまさしくこれと同じ構造である。

 医療機関にPCR検査を委託しても、その結果を把握して、指定医療機関へ振り分けるなど、保健所がやらなくてはいけないことは山ほどある。つまり、どんなに委託先の医療機関を増やそうが、コロナが指定感染症である以上、保健所自身の仕事量が減るわけでないので、さばくことができる数には限りがあるのだ。

 だから、ワイドショーのコメンテーターがどんなに「PCR検査を増やせ」と叫んだところで、一向に増えない。「安倍政権が感染者を少なく見せるために検査を抑えている」という話ではなく、これが保健所の処理能力の限界ということなのだ。

 現場の医療従事者たちは、この構造的な問題を身をもって体験している。今の体制のまま検査数を増やせば、保健所は間違いなくパンクする。たとえるのなら、過労死続出のブラック企業に、国家プロジェクトを「あとはよろしく」と丸投げするくらいの無茶な話なのだ。だからこそ、日本医師会はかなりの危機感をもって、このような「緊急提言」をしたのではないか。

 さて、このような話を聞いて皆さんはきっとこう思うはずだ。だったら、PCR検査を増やすためにも、医療従事者の負担を減らすためにも、そして保健所の膨大な業務で死にそうになっている人のためにも、新型コロナをサクッと指定感染症から外せばいいじゃないか、と。