ただ、これがなかなか難しい。日本のコロナ対策の陣頭指揮をとっている厚生労働省健康局結核感染症課が、決してそのような話を容認しないからだ。
6月12日に参議院厚生労働委員会で、現役医師でもある日本維新の会の梅村聡議員が、「厚生労働省としては、この新型コロナウイルス感染症を指定感染症にし続けて運用することのメリットというのは、逆にどういうことを感じておられるでしょうか」と質問をした。やはりこの運用が、保健所をはじめ医療現場を疲弊させているのでは、という問題意識からだ。すると、答弁に立った厚生労働省健康局長からこのような回答が返ってきた。
《この新型コロナウイルス感染症について、現在、その感染力とか罹患した場合の重症度などに係る知見を収集している段階でございますので、次なる波に備えるために、引き続き、適切な感染防止策が講じられた感染症指定医療機関等での入院措置とか、あるいは汚染された場所の消毒などの対応について、法的根拠をもって対応することが必要でございまして、少なくとも、現時点で直ちに指定感染症の指定を取りやめるというような状況にはないのではないか、というふうに思っております》
なぜ厚労省は新型コロナを
頑なに指定感染症から外さないのか
官僚らしいまわりくどい言い方だが、要約すると、「あのさあ、コロナ対策は国が法に基づいて進めるって決められてんだから、そんなことできるわけないでしょ」というわけだ。いずれにせよ、行間からは指定感染症から外すという考えは1ミリたりとも感じられない。
では、なぜ厚労省はそこまでしてコロナを指定感染症にとどめておきたいのか。いろいろなご意見があるだろうが、この組織の「出自」に関係しているのではないかと考えている。
実は、厚生労働省の前身である厚生省が1938年に設立された理由の1つは「結核撲滅」だ。当時、世界的に流行して、日本でも死亡率が高かったこの感染症に立ち向かうため、小泉親彦・陸軍省医務局長ら陸軍主導で組織された。当時の状況に詳しい書籍『結核と日本人 医療政策を検証する』(常石敬一著 岩波書店)の記述を引用させていただこう。