しかし、少なくとも自身のキャリアを考えるとき、これからの日本経済の動向や業界のトレンドをベースに判断しても仕方がないと考えているのだと思います。先読み行動にはあまり意味がないことをよく知っている、と言ってもよいでしょう。

 付け加えれば、エグゼクティブは前述したように経営者やビジョンに加え、自分が面白いと感じることを大切にしている特徴があります。自分が面白いと感じるセンサーの中に時代を先取りする感覚や、新たな変化が起こる兆候への嗅覚が含まれているのかもしれません。

VUCAの時代に必要なのは
予測力より「変化対応力」

 新型コロナウイルスが我々に示した教訓は、「将来のことなど何もわからない」ということです。中国の武漢市で流行する原因不明の肺炎について厚労省が注意を呼び掛けたのは今年1月ですが、その時点で世界中でロックダウンが実施され、オリンピックも延期されると誰が予想していたでしょうか。

 まさにVUCAの時代が極端な形で現れたわけですが、その世界において武器となるのは予測力ではなく変化する環境への適応力であり、自分自身が変化し続ける対応力です。

 そこでより重要になってくるのが、インプットする情報の質です。

 ネットメディアやSNSの発達で情報収集自体は昔よりも容易にできるようになっており、ある程度のレベルまではいくらでも情報は入ってきます。そうした情報収集も必要ですが、自分にとって本当に有意義な情報はそうしたチャネルからはあまり入ってこないでしょう。

 自分にとって有意義な情報、言い換えれば自分にとって響くような、意思決定に大きな影響を与えられるような情報は、やはり対面でなければなかなか得られません(ここではリアルの対面だけでなく、Zoomなどのツールを使った対面も含みます)。

 たとえば、ある会社の理念はホームページを見れば書いてありますが、それがどの程度の本気度を持って取り組まれているかは、ネットの情報を眺めていてもつかめません。しかし社長と直接話す機会があれば、10分も話せばわかるでしょう。

 逆にメディアのインタビューで立派な話をしている経営者も、実際に関わりのある人と話せば実態と大きなずれがあると見えてくることがあります。

 直接顔を合わせて話すことは難しい状況が続いていますが、人的ネットワークを構築する重要性はますます高まっていることに注意が必要です。

(株式会社クライス・アンド・カンパニー代表取締役 丸山貴宏)