50億円――。政府系金融機関の日本政策投資銀行が8月、専門店ビル大手のパルコへの投資によって手に入れた利益だ。
民営化路線を歩んでいた政投銀が、投資事業の育成に向けた第一号案件としてパルコを選定し、成果を挙げたことの意義は大きい。経常利益が1000億円弱の同行にとって、業績への貢献度も申し分ない。
にもかかわらず、政投銀の中から喜びの声があまり聞こえてこない。なぜか。その理由は、成長支援を目的にしたパルコへの投資で、当初から受難が続き、事業面では目に見える成果を残せなかったことにある。
両社の連携は2010年8月、パルコが発行した150億円の新株予約権付社債(転換社債=CB)を、政投銀が引き受け資本・業務提携を結ぶかたちで始まった。
その提携の直後から、受難は訪れた。不動産開発大手でパルコの筆頭株主の森トラストが、提携に際して「事前の相談がなかった」と怒りの声を上げたのだ。
2000年代初め、旧セゾングループの解体によって独り立ちを迫られたパルコに、支援の手を差し伸べたのが森トラストだ。恩義のある相手だけに、パルコ経営陣の戸惑いは大きかったが、「信義則違反」として怒りを買うことの代償は大きかった。
提携の翌年、小売り大手のイオンがパルコの株式12%超を取得すると、森トラストと共同でパルコの経営陣刷新を求める事態に発展。株主総会を控えるなか、一時は委任状争奪戦の様相を呈し、政投銀が対抗措置として「CBを株式に転換する直前までいった」(幹部)ほど、関係はこじれた。
結果は、パルコ社長の退任とイオンとの業務提携の検討というかたちでいったんは手打ちとなったが、パルコの従業員など「現場の反発はかなり大きった」(業界関係者)という。