ドル安が取り沙汰されるが
そもそもドル高は長過ぎた
7月以降、為替市場ではドル安が話題になった。8月中旬以降、ようやく落ち着きを見せているが、まだ予断を許さないだろう。
おそらくドル全面安の起点は「米財政赤字の未曽有の大きさ(2020年は最大GDP比30%に達する状況)」、言い換えれば「ドルの過剰感」ではないかと筆者は感じている。そうでなければ、ユーロ以外の通貨まで広くあまねく上昇したことの説明がつかないからだ。
また、新型コロナウイルスの感染拡大防止において、トランプ政権の対応の不味さが指摘されていることも、ドル売りの一因と言われる(相対する欧州では、収束傾向が見られている)。
こうして、米国の政治・経済・社会への不安がドル売りとして現れていると考えるのが最も腑に落ちるが、だからといって米金利が上昇しているわけではないため、市場参加者が米国に対して心底不安を抱いているわけではあるまい。
あくまで「米国不安を映じたドル安」は、もっともらしいマーケットトークとして流行しているに過ぎないという理解で良いだろう。そもそも2014年6月から始まったドル高局面が長過ぎたのであり、変動為替相場制の下で当然想定されるべき揺り戻しが起き始めていると考えれば、まだこの流れは続いても不思議ではない。
対ドルで同じく趨勢を強めた
「ユーロと円の違い」を探る
とはいえ、ドル全面安の中、3月の安値から最大で+12%近く上げたユーロの動きは確かに目立つものだった。こうした中、円も対ドルで騰勢を強めたが、年初来高値(101.18円)には届かなかった。
こうした相場つきを見るにつけ、「ユーロにあって円にないもの」を検討する価値はあるように思えた。非常にシンプルに考えれば、(1)欧米金利差の急縮小、(2)欧米成長率の逆転が、ユーロ買いの要因として作用している可能性が考えられる。