偽薬効果による株高

 医学の世界に「偽薬効果」というものがある。医者が患者に「良い薬だ」と言って小麦粉を渡すと、患者の病気が治ることがあるらしいのだ。それと同じで、黒田総裁は株価が上がるはずのない政策を採用したのに、株価が上がったわけだ。これも偽薬効果といっていいだろう。

 前任者も、質的には似たようなことをやっていたが、量的には多くなかったことと、「あまり効果は見込めないけれど」と言いながらやっていたので、株価が上がらなかったのである。

 もしも金融緩和それ自体に効果があるのであれば、前任者の時にも少しは株価が上がっていたはずであるが、そうではなかったということは、その粉は薬ではなく小麦粉だったということを示唆しているわけだ。

 そんな粉を医者が「小麦粉です」と言って患者に渡せば、偽薬効果が表れるはずはない(笑)。

 上記の話をセミナーで披露したところ、「黒田総裁は、資金が出回らないことを知っていたのですか?」という質問を頂いた。これは答えにくい質問である。医者が小麦粉だと知らずに渡せば愚か者であるし、知って渡せば詐欺である。

 黒田総裁はどちらなのか。筆者は以下のように答えた。「名医である。以上」。

 余談であるが、なぜ野菜のカブは値上がりしなかったのか。それは、カブの値段は美人投票では決まらないからである。株は保管コストが不要だが、カブは保管コストがかかるので、来年食べるカブを今買う人はいないのである。日銀が物価を上げようと思っても、カブの値段は株価ほど簡単には上がらないのだ。

 本稿は、以上である。なお、本稿は筆者の個人的な見解であり、筆者の属する組織等々とは関係が無い。また、理解しやすさを優先したため、細部の厳密さは犠牲になっている場合がある。