高級一戸建てだけではなく、一般的な一戸建てでも房総半島エリアの人気が高まっている。その様子が物件の価格動向からもうかがえる。不動産情報大手のアットホームが8月、下図のような、住宅の平均価格動向のマップを発表した。

 特に千葉県と神奈川県を見ると、中古マンションの平均価格が下落しているのとは対照的に、新築一戸建ての平均価格が上昇しているのが分かる。

 7月時点における東京23区の新築一戸建ての平均価格は5531万円、その他のエリアでも平均価格は3977万円だ。

 一方で、千葉県西部(柏市、松戸市、流山市、我孫子市、市川市、浦安市、習志野市、船橋市)の新築一戸建ての平均価格は3464万円で、前月比0.8%増と2カ月連続で上昇した。2000万円台、3000万円台が全体の70%超を占めている。西部を除くその他のエリアの平均価格は2866万円で、前月比1.5%増と5カ月連続で上昇。2017年1月(2600万円)以降の最高額を更新し続けている。

 また神奈川県では、横浜市と川崎市の新築一戸建ての平均価格が4291万円で前月比0.5%増と上昇。3000万円台、4000万円台の物件が全体の80%近くを占めている。その他のエリアの平均価格は3715万円で、前月比0.7%増と3カ月連続で上昇。3000万円台の物件が最も多く、全体の40%超を占めている。

 東京都ほど価格が高くなく、同じ予算の物件なら1部屋増やせるという点が神奈川県湘南エリアと千葉県房総半島エリアの人気を後押しした。それが結果として、両エリアの新築一戸建ての平均価格を押し上げているとみられる。

 一方で、満員電車を避けるため郊外から都市部に引っ越す人もおり、都市部の中古マンション、新築一戸建ての価格は共に維持ないし上昇している。

一戸建てが好調のオープンハウス
2~3駅エリアを延ばす傾向も

 湘南エリアや房総半島エリアがコロナ後に注目を浴びるようになったのは、住宅への価値観の変化がある。テレワークが普及するにつれて自宅にいる時間が長くなり、特に手狭な賃貸マンションではさまざまな問題が浮き彫りとなった。

 例えば騒音問題。ドアの開閉音、スピーカーやテレビの音声、話し声など、会社にいれば普段は気にならないような音に関する相談が管理会社に多数寄せられるようになった。また夫婦共働きなら、これまでは広めの1LDKでもよかったが、自宅で仕事をするようになったときにお互いの仕事部屋を確保できない。こうしたテレワークならではの問題が表面化してきた。

 そのため、コロナ禍を機に賃貸住宅から分譲住宅に住み替えを検討する人が増えた。分譲住宅大手のオープンハウスでは、「コロナ後のマーケットは好調で、当社への問い合わせ件数は前年同時期と比べて80%増となった」(同社執行役員の矢頭肇氏)。

 一戸建て販売の先行指標となる仲介契約件数は、コロナ禍直後の4月は前年同月比で39.1%減だったが、5月は同43.0%増、6月は同52.3%増、7月は同55.5%増と好調だ。

 同社の購入者層はもともと約8割が賃貸物件からの住み替えで、そのうち7割が1LDKに住んでいる若い夫婦だ。共働き世帯も多いため、大半は通勤などを考慮して今住んでいるエリア付近で検討する。

 だが、コロナ後は「駅近から郊外への流れは限定的にせよ、検討エリアを2~3駅分ほど広げる人が増えた」(矢頭氏)。同じ予算なら2~3駅ずらして土地が安い場所で、1部屋増やした物件を選び、仕事部屋を確保したいという理由だ。

 具体的には、もともと東京都の世田谷区、大田区、品川区辺りに住んでいた人が、多摩川を渡り神奈川県の川崎市、横浜市まで検討エリアを延ばしている。東京以外の出身で、今住んでいる場所に執着がないような人たちがエリアを広げる傾向にあるという。

 果たして湘南エリアと房総半島エリアの再評価、エリアの拡大が一過性のものなのか、それともマーケットの大きな転換点となるのか。もう少し時間をかけて検証していく必要がある。

Key Visual by Noriyo Shinoda, Graphic:SHIKI DESIGN OFFICE