列島明暗 都市・地方財界・名門企業#15
Photo by Koyo Yamamoto

東西2巨頭が君臨する鶏卵業界に激震が走っている。現職国会議員の逮捕を受け、業界2位のアキタフーズが家宅捜索を受けたのだ。8月、このアキタフーズ社長に元丸紅常務が就任。一方、業界1位には豊田通商が出資しており、総合商社が鶏卵業に手を伸ばしている。特集『列島明暗 都市・地方財界・名門企業』(全15回)の最終回では、総合商社と鶏卵業者の関係に迫る。(ダイヤモンド編集部 山本興陽)

河井夫妻の公選法違反事件で家宅捜索が入った
鶏卵業界2位の社長に元丸紅常務が就任

 現職の国会議員、河井克行・案里夫妻が逮捕・起訴された参議院議員選挙広島選挙区の公職選挙法違反(買収)事件。岸田文雄・自民党政調会長のお膝元で起きた事件とあって、“ポスト安倍”をうかがう岸田氏の求心力を大幅に低下させる事態になった。

 この買収事件を巡り、ある企業に家宅捜索が入ったことはあまり知られていない。7月4日、検察当局は事件の関係先として、広島県福山市の鶏卵業者、アキタフーズに家宅捜索に入ったのだ。家宅捜索を受け、同社は「法令遵守の精神に則り、健全な経営努力を続けて参ります」とのコメントを当時発表している。

 そして8月。この疑惑企業の社長に、丸紅で常務にまで上り詰めた人物が就任した。

 新型コロナウイルスの感染拡大の影響は鶏卵業界にも及んでいる。国内の鶏卵消費量は、家庭用と業務用が半々ずつとされるが、外食業界の不振で業務用の需要が大きく落ち込んでいる。

 巣ごもり需要による家庭用の伸長があっても、業務用の落ち込みをカバーできていない。需要の低迷を受け、8月の鶏卵価格は1kg当たり145円(JA全農たまごM基準値)にまで落ち込み、過去5年間の最低水準で推移している。

 “冬の時代”を迎えている鶏卵業界で今ホットな話題が、業界2位で同族企業であるアキタフーズの社長に、元丸紅常務の岡田大介氏が就任したことである。

 岡田氏は丸紅と伊藤忠商事の創業者である伊藤忠兵衛の末裔で、丸紅常務だった2013年に約2700億円の巨費を投じて米国の穀物大手、ガビロンの買収を主導した人物だ。

 ガビロンは買収以降、幾度にもわたってのれんの減損を迫られた、いわば丸紅の“問題児”である。20年3月にも約800億円の減損を出し、買収当時にあった約1000億円ののれんは“ゼロ”になってしまった。

 岡田氏は丸紅の次期社長候補と目されていたにもかかわらず、15年に突如、関連会社の日清丸紅飼料に転出した。丸紅関係者は、「ガビロン買収を進めた責任を取らされた明らかな左遷人事。ただ、正直、ガビロン以外にもいろいろとやらかしていた」と打ち明ける。

 19年には日清丸紅飼料からアキタフーズに移り、会長を経て20年8月の社長就任に至る。アキタフーズの売上高は約420億円。約7兆円の売上高を誇る丸紅とは規模がまるで違う。

 それでも鶏卵業者と太いパイプを築くことは、商社にとって多大なメリットが見込めるのだ。