鹿児島県の基幹産業の一つである観光業がコロナ禍で大打撃を被っている。その影響を受けて苦境に立っているのが、この分野で県下ナンバーワンの岩崎産業を中核とする名門、いわさきグループだ。社長は代々、鹿児島商工会議所会頭を務めており、まさに“鹿児島の顔役”として君臨してきた。そんな同グループは今回の事態にどう立ち向かっていくのか。特集『列島明暗 都市・地方財界・名門企業』(全15回)の#11ではいわさきグループの今後を追った。(ダイヤモンド編集部 大根田康介)
県外・外国人観光客がほぼゼロ
鹿児島観光消費額「6割減」の衝撃予測
「鹿児島県の観光消費額は2018年の約3000億円が近年のピーク。そのうち県外の宿泊客が約1500億円、訪日外国人観光客が約400億円だった。今回のコロナ禍で、この二つの消費額がほぼゼロになってしまった。このまま打開策を見いだせなければ、今年は観光消費額の約6割が失われてしまうことになる」
鹿児島市内に拠点を置く鹿児島銀行系のシンクタンク、九州経済研究所の福留一郎経済調査部長は、そんな衝撃的な予測を述べた。
書き入れ時であるゴールデンウイークが外出自粛期間と重なり、夏休み中の帰省も抑制された。さらに10~11月の観光シーズンも新型コロナウイルス感染拡大の影響が続くとみられる。観光業の先行きは悲観的な状況を避けられそうにない。
鹿児島県は製造業や畜産業と並び、観光業が基幹産業の一つだ。18年に観光消費額がピークとなったのは、NHKの大河ドラマ「西郷(せご)どん」(明治維新の立役者、西郷隆盛が主人公)の効果だった。
観光業の裾野は広い。ホテルなどの宿泊だけでなく、観光客による飲食や土産物の購入などさまざまな消費が発生する。観光客の「人数」「平均滞在日数」「1日当たりの平均消費額」を掛け合わせたものが観光消費額となるが、これが6割も失われてしまえば、観光業に携わる企業にとって大打撃なのは間違いない。
この影響をもろに受けているのが、22年に創業100年を迎える鹿児島県の名門で、いわさきホテルを展開するいわさきグループだ。