コロナ禍で大打撃を受けている観光業界。その余波は、おなじみの土産メーカーにも及んでいる。土産業界では“禁じ手”とされる値下げに踏み切った企業も少なくない。特集『列島明暗 都市・地方財界・名門企業』(全15回)の#5では、廃業・倒産が続出しかねない土産メーカーの特殊なビジネスモデルに迫った。(ダイヤモンド編集部 山本興陽)
コロナ禍で土産業界が苦境
旅行や運輸よりも厳しい
東京土産「東京ばな奈」は全国のセブン-イレブンで販売。福岡土産「博多通りもん」は北海道・札幌駅で堂々と展開――。コロナ禍で、土産物の不文律が次々に崩されている。
全国各地の土産メーカーが苦境に陥っている。土産メーカーの売り上げは当然ながら「店舗や駅、空港など施設の客数に連動する」(業界関係者)。
新型コロナウイルスの感染拡大に伴う外出自粛や移動制限で、旅行や出張は激減。おまけに企業のテレワーク普及などで、土産物を職場で渡す機会も減った。土産物の需要が“蒸発”しているのだ。
8月の中旬、北海道の人気土産「白い恋人」の工場を訪れると、三つある生産ラインはわずか一つしか動いていなかった。
担当者は、「コロナ前は1日にだいたい30万枚くらいを製造していた。それが今は5万枚程度になっている」とこぼした。単純計算すれば、コロナのせいで生産量を83%減らす事態に追い込まれたのだ。
今年のお盆期間の交通機関の利用者は、JALの国内線が前年同期比で67%減、JR東日本の新幹線、特急が同77%減だった。白い恋人の工場の83%減の数字と比べれば、土産業界の旅行業界や運輸業界よりも深刻な実態が浮かび上がる。