新型コロナウイルスの感染拡大で、不動産業界にも大きな変化が起きている。都心はなにかと密になりやすく、暮らしにくさを感じる一方で、テレワークの推進を受けて「もはや都心駅近でなくてもいいんじゃないの?」と、郊外の住宅購入を検討する人が出てきているという。果たしてこれは、不動産業界の新しい潮流となりうるのか。不動産企業やオーナーなどに対して年間約170回の講演活動をしているプリンシプル住まい総研の上野典行所長が、住宅需要は都心の駅近から郊外に移行するのか、その真偽を解説する。
コロナで不動産市場は大打撃も
不動産情報サイトの閲覧数は好調
コロナ感染が拡大する中、新築マンションの2020年上期(1~6月)の供給戸数は対前年比で44.2%減(不動産経済研究所調べ)、首都圏中古マンションの2020年4~6月の成約件数は対前年比で33.6%減(東日本不動産流通機構調べ)と、不動産業界は大きな影響を受けている。
賃貸に関しても3~5月における入居時の火災保険の契約件数が首都圏で2割ダウンしたことから、転勤の延期などによる影響があったと考えられる。感染拡大の第2波が到来し、収束の見込みがつかない中、今後も住み替えが進まない可能性は高い。
しかし、こうした最中もSUUMOなど不動産情報サイトの閲覧数は好調だという。外出自粛で閉塞感を覚え、「いっそのこと住み替えようか」とネットで憧れの街を探す人は少なくないのだろう。テレワーク中に近隣の騒音がうるさいと感じたり、子どもがオンライン授業を受けている隣で仕事をしたりしなければならない状況が、手狭な住環境を改善したいと考えるきっかけにもなっている。
つまり、住み替えそのものへの意欲がなくなったわけではなく、感染防止の観点から「外出して新居を見学する」という行為にストップがかかっているだけなのだ。そこで業界では「オンライン見学」や「VR内覧」「IT重説」など、非対面での住まい探しの対応が急遽進んでいる。
※オンライン見学…部屋の様子をZoomなどのアプリを使って現地に見学に行かなくても実況中継するもの
※VR内覧…バーチャルリアリティ用のカメラで撮影された物件を、専用のゴーグルなどをかけて、現地に行かずに見るもの
※IT重説…賃貸契約での対面での重要事項説明を、オンラインアプリを通じて、スマホなどで、非濃厚接触で行うサービス(個人の売買契約ではまだ対面が原則)。