石破茂・元自民党幹事長石破 茂・元自民党幹事長 Photo by Toshiaki Usami

イージス・アショア(陸上配備型迎撃ミサイルシステム)の配備停止に伴い、政府は新たな安全保障戦略を年内にまとめる予定だ。
論点の中心は「敵基地攻撃能力」の保有だが、28日に突然、辞任を表明した安倍晋三首相には政権のレガシー(政治的遺産)にという思いがあったともいわれる。
防衛問題に精通する石破茂・元自民党幹事長は、「陸上イージスの穴をどう埋めるかを検討することが先。敵基地攻撃能力を持てば日本が先制攻撃をすると誤解されかねない」と慎重論だ。持論である憲法改正の必要性は語りながら、「政治的なエネルギーを集中すべき課題はほかにある」という。
石破氏は安倍首相の辞任表明を受けて「驚いたが、党員の期待があるし、安倍政権で一緒にやった責任もある」と後継への意欲を示した。
8月中旬に行ったインタビューで語った“ポスト安倍”の安全保障戦略や日本の課題に対する考えを紹介する。(聞き手/ダイヤモンド編集部特任編集委員 西井泰之)

陸上イージス計画変更は違和感
敵基地攻撃能力は論理に飛躍

――イージス・アショアの配備停止を受けた「敵基地攻撃能力」の検討を求める自民党の提言をどう受け止めましたか。

 陸上イージスの配備は、防衛の専門家や制服組も加わって検討し最終的には総理が決断された。それだけの重みのある決定を、変更した経緯が簡素すぎることには違和感がある。

 配備を決めた一番の理由は、北朝鮮のミサイル防衛にあたる海上自衛隊のイージス艦の負担軽減だったはずだ。イージス艦は、対空、対潜水艦能力も非常に優れた艦なので、中国の脅威が顕在化している尖閣などの南西諸島方面に数多く配備したいところ。その虎の子を日本海にずっと張り付かせることになっている。