一方、韓国は安全保障を米国に依存している。その韓国が、中国の陣営に本格的に参入することはできないとみられる。早期の訪韓が実現し、文氏が対中関係を重視する考えをより鮮明に示したとしても、短期的に韓国を巡る情勢が大きく変わるとは考えづらい。逆に、文氏が経済面での対中関係を重視すればするほど、米国が韓国に厳しい姿勢を示すことも考えられる。それに対してわが国は国際世論の変化を機敏にとらえ、“大人の姿勢”で安全保障体制と経済基盤の安定、強化に注力すべきだ。

孤立回避に向け
アジア外交を重視する中国

 先述したように、足元、米国の自由資本主義体制と、中国の国家資本主義体制の衝突が激化している。そんな中、ポンペオ国務長官は「中国の台頭が自由資本主義の脅威である」と主張し、連携強化による対中包囲網の形成を世界各国に呼び掛けている。欧州やわが国など米国とともに安全保障の体制をとっている国々がそうした見解を支持し始めている。

 特に、オーストラリアの対中批判は明確だ。モリソン政権はコロナ発生の独立調査を国際社会に求めた。独立調査を求める国が増えれば、中国共産党は内外の強い非難に直面するだろう。習主席はその展開を避けなければならない。中国は豪州からの農産品などの輸入を制限し、歯向かえば経済面で大きな代償を支払うことになると警告している。

 一方、中国の圧力が国際世論に変化を与えていることも事実だろう。いち早く回復基調をたどり始めた中国と、スマホアプリの遮断やファーウェイへの禁輸強化などに動く米欧との溝は深まっている。

 そうした状況を打開するため、中国はアジア各国との外交政策を強化し始めた。今のところ、アジア地域ではカンボジア、ラオス、ミャンマーが親中姿勢を示している。中国はそうした国を増やしたいと考えているだろう。中国習政権はアセアン諸国との関係強化を目指しているものの、今のところ目立った進展はないようだ。

 8月22日、事態打開を目指して中国の外交トップ楊潔チ(チの字は竹かんむりに“褫”のつくり)政治局員が訪韓した。それは、中国が対韓関係を重視し始めたことを意味する。文政権は経済面で対中関係を重視している。もし、米国の同盟国である韓国が中国との経済的な関係の強化に動けば、親中に傾くアジアの国は増える可能性がある。

 それは、中国が米国の覇権にくさびを打ち込み、世界経済の成長に重要な役割を果たすと期待されるアジア新興国地域への影響力を強めることにつながるだろう。それに加えて、DRAMなど世界の半導体市場でシェアの高い韓国との関係強化は、中芯国際集成電路製造(SMIC)など中国の半導体受託製造企業の成長を促進するためにも重要だ。