安倍晋三首相が健康問題を理由に辞意を表明した。連続在任日数が憲政史上最長を突破した直後の電撃表明だ。安倍首相には心から「お疲れさまでした」と申し上げるとともに、健康回復を願っている。しかし政治学者として、安倍首相の「史上最長在任記録」に隠れている日本政治の大問題について触れなくてはならないと考え、今回は筆を執った。(立命館大学政策科学部教授 上久保誠人)
歴代最長任期を突破した直後に
安倍首相の電撃的な辞意表明
安倍晋三首相は、8月28日に記者会見を行った。この記者会見で、安倍首相は持病の潰瘍性大腸炎が再発し、職務の継続が困難になったとして辞任する意向を表明した。北朝鮮による拉致問題やロシアとの平和条約締結、憲法改正などの未達成の政治課題を具体的に挙げながら、任期途中での辞任について「国民に心よりおわび申し上げる」と陳謝した。
安倍政権は、通算在職日数でも連続在職日数でも歴代最長に達した。長きにわたって内閣総理大臣として日本を率いてきた安倍首相に、心から「お疲れさまでした」と申し上げたい。
通算で約8年8カ月の激務による疲労は想像を絶するものだろう。持病が悪化したのは致し方ない。安倍首相は無念なことだと思う。まずは、治療に専念していただきたい。1日も早く健康を回復し、また元気な姿をわれわれ国民に見せてほしいと思う。
しかし、そうした話とは別に政治学者として今回指摘しなくてはならないと考えたのは、安倍首相が憲政史上最長の任期に達したのは、「史上最も軽い神輿(みこし)」だったからという見方ができるという点だ。