中国の潜水艦はソ連と対立していた冷戦時代には黄海の奥の渤海、遼東湾を主な拠点としていた。

 だがその海域の水深は平均25mほどで極めて浅く、さらに浅い部分もある。全長13mの弾道ミサイル「巨浪2」を立てて搭載する「晋型」原潜などの大型潜水艦が出動する際には浮上して延々と黄海を南下せざるを得ず、空から丸見えになる。

 このため中国は海南島に地下の埠頭を設けるなど、海軍基地の強化を進め、同島南部の楡林(ユリン)は潜水艦隊の根拠地となっている。前面の東シナ海は深く、潜水艦は出港後すぐ潜航できる。

 中国は「晋」級弾道ミサイル原潜4隻を保有している。先制攻撃に対する残存性を確保するため、常時少なくとも1隻は外洋で待機させ、核攻撃を受けても反撃できる能力を保って、抑止力とすることを当然、計画しているようだ。

 ロシアは米海軍が入りにくい、スカンジナビア半島の東北の白海と、カムチャツカ半島の西側のオホーツク海北部を弾道ミサイル原潜の待機海面としていた。

 中国には浅い黄海以外にそのような内海はないから、南シナ海に人工島を築いて飛行場を造るなどして弾道ミサイル原潜の隠れ場所にしようとしているようだ。

 こうした中国の動きに対し、米海軍は嘉手納から出る対潜哨戒機やグアムを基地とする潜水艦などで海南島周辺の中国潜水艦を追尾、海洋調査船を南シナ海に入れて将来の対潜水艦戦に必要な情報収集を行い、海底地形や時期ごとの水温(音波の伝わり方は温度で変わる)、潮流などの調査を行ってきた。

 それを妨害しようとする中国艦船との異常接近がしばしば起こり、2001年には海南島沖で米海軍の電子偵察機と中国の戦闘機の空中衝突も起きた。

米国の「海洋の自由」
実態は「情報収集の自由」

 中国が南シナ海に人工島を築いて領海化を進めても、人工島が領海の基点とはならないのは国際法上明白だから、米国は「海洋の自由」を掲げて中国を非難している。

 だが米国のトルーマン大統領は、第2次世界大戦終了直後の1945年9月、それまでの国際法で伝統的だった「領海3海里(5.5km)」の原則を無視して、メキシコ湾での石油開発を独占するため、米国から水深200mまで延びている「大陸棚」を自国の支配下に置くこと、および米国周辺の公海での外国漁船の操業を取り締まることを宣言した。