共生社会の実現のために誰もが意識しておくこと

 また、今年2020年4月からは、特例給付金制度と優良事業主の認定制度がスタートしました。

 これにより、法定雇用率に含まれない、週10~20時間未満の短時間で働く障がい者を雇用する企業にも給付金が支給されることになりました(ただし、雇用率制度の対象となる障がい者は従来どおり「週20時間以上の労働者」)。

「障害者雇用促進法」を知るにあたって、雇用の分野での「障害者差別禁止」と「合理的配慮の提供」が義務づけられていることも押さえておくべきです。

 たとえば、障がいを理由に、採用を拒否する、低い賃金を設定する、昇給をさせない、研修・現場実習を受けさせないといったことはすべて差別にあたります。「合理的配慮」というのは、例をあげれば、聴覚障がいのある人に筆談で面接を行ったり、車いすを使用している人のためにデスクの高さを調整するといったことです。この「合理的配慮」の姿勢は、ダイバーシティ社会に欠かせないことなので、必ず念頭に置いておきましょう。

 企業経営者や人事担当者は「障害者雇用促進法」を理解し、法定雇用率をはじめとした義務の遂行を最新情報とともに成し得ていく必要があります。ダイバーシティ社会に生きるビジネスパーソンや学生も「障害者雇用促進法」の存在を常に意識し、皆が働きやすく、学びやすく、暮らしやすい共生社会の実現を目指していきたいものです。

 なお、障がい者雇用に関して、企業経営者や人事担当者が、わからないこと・困ったことがある場合は、まずはハローワークなどの就労支援機関に聞くことをおすすめします。個別企業に合った業務の創出や切り出し、雇用条件、助成金の活用法など、さまざまな相談に乗ってもらったり、適切な窓口を紹介してもらったりすることができます。

※本稿は、現在発売中のインクルージョン&ダイバーシティマガジン「オリイジン2020」の特集「D&Iな暮らし方・働き方に役立つ法律のツボを知っておこう!」の一部を加筆修正したものです。実際の誌面では、マンガも加えて分かりやすく解説しています。