
2000年代初頭から、大手ビールメーカー4社はワインやウイスキー事業を買収し、来るビール市場の縮小に備えるべく、総合酒類化を進めてきた。しかし、総合酒類化の事業モデルにも限界がきており、アサヒは取捨選択を進めているようだ。特集『アサヒ 王者の撤退戦 ビールメーカーの分水嶺』の#4では、内部資料を基に、“リストラ”候補と積極投資していく品目を明らかにする。(ダイヤモンド編集部 下本菜実)
総合酒類化の“リストラ”候補は?
今後のポートフォリオを入手
主力商品がビールであることから、「ビールメーカー」と呼ばれるが、大手4社の商品ラインアップはビールや缶酎ハイだけにとどまらない。
アサヒグループホールディングス(HD)をはじめ、大手4社は2000年代から総合酒類化に本腰を入れ始めた。先鞭をつけたのはアサヒだった。
01年にすでに販売提携をしていたニッカウヰスキーを買収し、完全子会社化。02年には旭化成の酒類事業部から、焼酎と低アルコール飲料の事業を買収した。
その動きに続いたのがキリンホールディングスで、06年にメルシャンを連結子会社化。10年に全株式を取得し、完全子会社化した。低価格のワイン市場を広げ、スーパーやコンビニなどの小売店にワインが並ぶようになった。
そこでアサヒは輸入ワインや中・高価格帯に狙いを定め、12年からチリワインの「サンタ・ヘレナ・アルパカ」ブランドの販売を開始。15年にはワインの輸入と販売を行うエノテカを買収した。
一方で、サントリーホールディングスは米国で巨額買収に踏み切る。14年に1兆6500億円で、ウイスキーの「ジムビーム」などの製造や販売を行うビームを買収したのだ。これにより、サントリーは蒸留酒メーカーとして世界3位に浮上し、海外展開に弾みをつけた。
現在、アサヒの酒類事業はビールやRTD(レディ・トゥ・ドリンク。缶酎ハイなど)のほか、ワイン、焼酎、ウイスキー、テキーラなどの販売を行っている。今回、ダイヤモンド編集部は24年から26年にかけての事業ポートフォリオを詳細に記したアサヒビールの内部資料を入手した。資料からは、酒類事業が抱える課題のほか、投資縮小となっている“リストラ”候補や新商品の構想などが読み取れる。アサヒは、酒類の取捨選択を明確に進めており、総合酒類化からの“撤退戦”といえるだろう。
では、どのジャンルに積極的に投資を行い、何を縮小していくのか。次のページで解説していく。