厚生労働省によれば、民間企業で働く障がい者は56万人を超え、過去最多を毎年更新している(2019年発表)。1960年の「身体障害者雇用促進法」制定から今年2020年で60年。企業による障がい者の雇用は「努力目標」から「法定義務」となり、1998年には知的障がい者が、2018年には精神障がい者が含まれるようになるなど、法律の改正も後押ししている。一方で、障がい者の職場定着率を上げるために、“就労系障害福祉サービス”を行う事業者(就労支援機関)と企業の連携が、いま強く望まれている。(ダイヤモンド・セレクト「オリイジン」編集部)
*本稿は、現在発売中の『インクルージョン&ダイバーシティ マガジン 「Oriijin(オリイジン)2020」』からの転載記事「さまざまな障がい者の雇用で、それぞれの企業が得られる強み」に連動する、「オリイジン」オリジナル記事です。
利用者増の「就労移行支援」とはいったいどんなものか?
「現在、御社は障がい者の雇用をどうされていますか?」――企業の人事担当者が、障がい者の就労支援機関を名乗るところからこうした電話を受けることが増えている。
一般企業や国・地方公共団体などによる障がい者の雇用は法定義務(「障害者雇用促進法」障害者雇用率制度)であり、実際、障がい者が就労系の障害福祉サービスを利用して就労するケースはこの10年で10倍以上も数字を伸ばしている(約1万5000人/年)出典1。
就労系の障害福祉サービスは、「就労移行支援事業」「就労継続支援A型事業」「就労継続支援B型事業」があり、2018年(平成30年)4月から「就労定着支援事業」も加わった。また、これらの障害福祉サービスを行う事業者のほか、就労支援機関としては、障害者就労支援センターや障害者就業・生活支援センターなどもあり、障がい者自身や企業の人事担当者も明確な違いが分からないほど多岐にわたる。
なかでも、利用者(主に障がい者)が増えている「就労移行支援」とはいったいどんなものか?
これは、事業者が、働く意思を持つ65歳未満の障がい者(原則18歳以上)に対し、就労に必要な知識や職業能力の訓練を行うもので、事業所は全国に3400以上あり、福祉法人・NPO法人・民間企業などが運営している。そのほとんどが通所型の福祉サービスで、公共職業安定所(ハローワーク)や医療機関などと連携したうえで、利用者それぞれの適正に合った就労支援を行っている。