「できない」経験が共感につながった

「自己中」なあなたの物語が聞き手の心を揺さぶる

三輪:僕たちの世代からすると、中学生の時は家庭用パソコンがあることや、インターネットが使えることは当たり前でした。たしかにインターネットが使えなかった時代、ビジネスパーソンがどうやって仕事をしていたのかは想像もできません。

 澤さんは、文系出身のエンジニアとしてキャリアをスタートさせています。それも、この全世界リセットがきっかけだったのでしょうか。

:僕がエンジニアとして働き始めたのは1995年よりも少し前の1993年のことでした。当時は、「文系SE」というキャリアは一般的ではなくて、周囲のエンジニアよりも技術的には劣っていました。でもそれが、1995年を境に激変したんです。

 Windows95が出たことで、世界中のエンジニアは一旦、リセットされた。これまで蓄積してきた知識が突然古くなって、新しい知識を学ばなければならなくなったんです。みんな同じスタートラインに立つことになったわけです。

三輪:それは確かに「全世界リセット」と言えますね。澤さんがプレゼンの達人になったのも、この世界の変化がきっかけだったのでしょうか。

:僕自身に大きな変化はありませんでした。もともとエンジニアとしての知識も技術も足りなかったので、とにかく学び続ける必要があった。それが結果的に、1995年の全世界リセットで、誰もが新しい知識を学ぶことになった時に役立った。

 僕は自分ができなかったからこそ、できない人がどこでつまづくのかが分かるんです。だから人に分かりやすく伝えることができる。

 三輪さんの著書『100%共感プレゼン』でも触れていたように、過去に失敗した経験があったからこそ、人に共感してもらえる話し方ができた。