長きにわたる安倍政権が終わり、菅政権が発足した。しかし、今回の総裁選にはあからさまな「石破つぶし」があった上に、閣僚人事にも安倍政権の影響が色濃く影響している。(立命館大学政策科学部教授 上久保誠人)
最後まで姑息だった安倍政権
菅義偉氏が第99代内閣総理大臣として、新内閣を発足させた。しかし、安倍晋三前首相の辞任から総裁選までの流れは姑息といえる。
安倍前首相とその周囲は、最後まで安倍首相が嫌う石破氏を不利な状況に追い込むために、両院議員総会で決める「緊急のやり方」を採用したのだ。これまでも安倍政権は、何度も都合よくルールをねじ曲げて、自らを守ってきた。いわゆる「モリカケ」問題、南スーダンの国連平和維持活動(PKO)の「日報隠し」、「桜を見る会」の問題、そして検察庁法改正案問題と、疑惑や不祥事が多数あった。
だが、その都度、官僚の忖度による隠蔽や公文書偽造、資料破棄、首相に都合のいい法律の解釈などが次々に起こった。国会では、閣僚や官僚の答弁が支離滅裂となり、二転三転した。首相やその周辺を守るために、官僚は平気で使い捨てられてきた(本連載第233回)。
そして、最後の後継者選びまで、首相の「石破嫌い」に忖度して、周囲が一斉に「石破つぶし」に動いてしまった。残念なことだが、いかにも安倍政権らしい、正々堂々としない、姑息な終わり方だった。
2位の岸田氏に次のチャンスはない。一方石破氏は政策次第
総裁選では、菅氏の勝利はほぼ確実という情勢下で、気が早い話だが、「ポスト菅」の総理総裁候補として生き残りを懸ける「2位争い」に焦点が当てられた。結果、2位となった岸田氏が生き残ったようにいわれるが、筆者は逆だと思っている。