チームの中でこそ生きる「エッジ」

「成長力」に続く2つ目の表に出てこなかった評価軸が「エッジ」だ(「真正性=Authenticity」については次回以降にあらためて解説する)。

 エッジとは言い換えれば、その人独自の武器や強みのこと。一部のベンチャー企業は人事評価で「エッジ」という項目を設け、自分独自の強みを磨き、個性を存分に発揮することを奨励している。

 Nizi Projectはあくまでもガールズグループを組成するための人材を求めており、個人の歌手としてデビューするわけではない。そこで必要になるのが、その人がいることで、グループにどのような強みが生まれるのかというポイントだ。優れたバイオリン奏者だけでオーケストラを結成できるわけではなく、それぞれの役割がイメージできることが重要だ。

 実際、Nizi ProjectでJ.Y. Park氏は、参加者それぞれの強みを意識させるコメントが多かった。例えばマコはリーダーシップ、ニナは高音のパワフルな歌声、リオはダンスなど、彼のフィードバックによって、参加者たちはエッジに磨きをかけていった。

J.Y. Park氏「まずニナさんは、歌が……本当に上手いです。踊りながら歌うという前提の元で、今回のNizi Projectの参加者の中で、一番上手いです。(ほかの参加者との)一番大きな差は、力を抜いた状態で高音を出せることです。プロデューサーの立場としては、ニナさんのような人がいるかいないかでは、とても大きな差です」――東京合宿 SHOWCASE ニナに向けて

J.Y. Park氏「歌を本当に褒めてあげたいです。ニナさんのようにパワフルな高音を出すメンバーもいますが、安定的に歌えるメンバーも必要です。その役割をリリアさんがやってくれました。声に本当に力があって豊かです。音程、リズムすべて安定的で上手に歌えました」――韓国合宿 チームミッション リリアに向けて

J.Y. Park氏「マコさんがいるチームはいつもチームワークが素晴らしかったです。このプロジェクトの間、他の参加者のお手本になって、このプロジェクトの力となりました。本当にありがとうございます」――韓国合宿 ファイナルミッション マコに向けて

 すっかり長くなったが、ここで本記事をまとめたい。

・Nizi Projectは、スター人材輩出システムとして極めてよくできた仕組みである

・Nizi Projectでは、スターの人材要件が定義・言語化され、ブレないものになっている

「ダンスレベル」「ボーカルレベル」「スター性」「人柄」という評価軸のほかにも、「成長力」「エッジ」「真正性(Authenticity)」が最低限の人材要件となる

・「ダンスレベル」と「ボーカルレベル」は後天的に高められるので、継続的にスキルを高めるための「成長力」がより重要な人材要件である

 次回は、J.Y. Park氏が大切にしている「承認」と「選考手法」について解説する。