相手の気持ちに寄り添いながら、最近の体調のことや体調管理のこと、睡眠や食事についての質問を入れるでしょう。相手の気持ちに寄り添うこと、そして聞いてさしあげることが大事です。

 もしその人から、「実は病院に行っているが、お医者様に指示されている薬を飲んでいない」という話が出てきたとしましょう。キャリアコンサルタントは基本的に医療には関わらないのですが、ご自身の考え方を聞いてあげるようにします。そして、「ちゃんとお医者様の診察を受け、指示に従うようにする」ことが、ご自身にとって最も大事なことであることをご自身で気づいてもらえるようにします。

 そして、「体調が回復したら、キャリアの相談に乗りたいからまた来て欲しい」と伝えます。

 他方、専門家の助けが必要だと感じた場合などは、本人の了解をとったうえで、産業医や看護師と相談することもあります。本人の了解を得られれば、上司と話すこともありますし、場合によっては三者で話し合うこともあります。働く人にとって何が大切か、企業にとっては何が大切かを真剣に考えて手を打つことが企業内キャリアコンサルティングの要諦なのです。

部下の育成が進まないなか
上司に気づきが必要なこともある

5)人材育成機能
 人材育成の柱は、日常的な上司の指導(OJT)にあります。

 キャリアコンサルンティングは社内のコミュニケーションをスムーズにする存在といえるでしょう。特に、上司の指導方法やコミュニケーションについて、部下の考え方とズレがある場合にはキャリアコンサルティングは上司に行うと効果的です。

「それでは、あなたは部下にどのような質問をしていますか?」「部下からの返事はどのようなもので、あなたはそれにどんな反応をしましたか?」という質問に答えていく中で、気づきが得られるものです。「あ、そうか。こうしろと自分の考えを押しつけてしまい、部下が自分で考えることをさせないできてしまった」という感想を寄せてくれた管理職の方もいました。

「リモートワークでは部下を育てられない」という話をよく耳にします。離れていると、上司の仕事ぶりを見て学ぶこともできなければ、必要な時に必要なアドバイスができないというのです。

 本当にそうでしょうか。部下をよく見ている上司であれば、「これだけは指摘していこう」、「自分で考えさせて、明日、考えていることを報告してもらおう」などと、「人材育成」の視点でどんな言葉をかけるか、考えるものです。

 Zoomなどのオンラインでのコミュニケーションでは、相手の言葉の背景にある気持ちに気づかないことがあるかもしれません。あるいは言葉と行動の違いを見極めなければならないというスキルも要求されます。

 もし、テクノロジーがネックになっているのならば、発想を変えてみてはどうでしょうか。「将来は働き方がさらに多様化し、リモートワークが当たり前になるかもしれない。それなら今のうちに、Zoomでのコミュニケーションを身に着けよう。それは将来のキャリアにプラスになる」という具合にです。

6)提案機能
 現場に密着しているキャリアコンサルタントは、客観的な意見を述べることができ、改善のヒントを提供する機能が期待されています。

「最近、多くの企業でこんなことが起こっていますが、この部署ではどうですか?」、「こんな考え方があるのですが、部下にこんなアプローチをしたらどうなんでしょうか?」

 このような語りかけだけで何かが動き出した。そんなケースを数多く、見てきました。

 オンライン会議を取り入れた企業は多いと思いますが、キャリアコンサルタントの視点でいえば、これを若手の提案力向上につなげられないだろうか、と考えます。