朝鮮半島統一で
強国を作る文氏の構想

 韓国の経済環境を考えると、文氏は国民に対して先行きへの期待を与えなければならない。最も重要なストーリーは、韓国が北朝鮮との宥和政策を立て直し、統一を目指すことで経済成長率を高めるという夢を人々に植え付けることだ。終戦宣言提唱の裏には、そうした文氏の思惑があるのだろう。

 冷静に考えると、それは荒唐無稽に映る。今のところ、北朝鮮が核を放棄する展開は考えにくい。足元の国際情勢を考えても、米中露は韓国主導での南北統一を認めていない。金王朝とも呼ばれる独裁体制を維持したい北朝鮮も、韓国主導での宥和・統一の推進は受け入れないだろう。

 ただ、左派政治家の文氏の考えは異なる。北朝鮮の経済復興の需要を手に入れることは重要だ。実現の可否は別にして、左派政権にとって南北統一を目指すことは、世論の後押しを取り付け政権基盤の安定を目指すために相応の説得力を持つ。

 今年6月、北朝鮮が共同事務所を爆破した結果、現在、南北の融和は難航している。国連での演説内容を見ると、文氏は国際世論を巻き込んで南北融和の立て直しを図ろうとしているように見える。終戦宣言に加えて、文大統領は北朝鮮に防疫体制の強化を呼びかけ、その枠組みにわが国や中国、モンゴルが参画する案も示した。そこには、韓国が国際世論をバックにわが国から資金を引き出して、南北の宥和政策の立て直しにつなげる意図がうかがえる。

 韓国問題専門家の中にも、文氏は反日の姿勢を強めて国際世論の同情や賛同を取り付け、わが国に朝鮮半島統一の資金を拠出させようとしていると指摘する向きが多い。その見方からすると、今回の国連総会における演説の意味は無視できない。文氏は朝鮮半島統一に向けて、国際世論を巻き込もうとし始めたともいえる。ベルリンでの少女像設置やネット上で韓国とフィリピンのユーザーが旭日旗を巡って対立した背景にも、反日感情を鮮明にしてより多くの同情を取り付けたいという文政権支持者の意向などが影響しているだろう。

わが国は一切の譲歩を排して
韓国に臨むべき

 9月24日の文氏との電話会談後、菅首相は元徴用工への賠償問題などに関して、韓国に一貫した姿勢で解決を求める考えを明確に示した。安倍前政権は、日韓請求権協定などの最終的かつ不可逆的な国家間合意に則った対応を文政権に求めた。わが国はその姿勢を堅持し、国際世論を味方につけて国際法に則った対応を韓国に求めればよい。

 韓国の経済状況を考えると、所得・雇用環境を中心に世論の不満は増大する可能性が高い。韓国銀行は、コロナショックの影響で金利の支払いが難しい企業の数は、昨年の3475社から本年は5033社に増える恐れがあると指摘した。韓国では“ゾンビ企業”が増加し、雇用機会の喪失が深刻だ。経済格差の拡大が見込まれる中、文氏にとって経済面で成果を示すことは難しい。