だが卒業5年目の2019年5月、異変が起きる。420万円以上を一括で払えと請求されたのだ。期日到来分と5月分で26万円、加えて将来払う予定の「期日未到来分」が398万円。さらに利息。猶予期間中だと思っていたAさんは当然驚く。

 Aさんによれば、支援機構の説明はこうだ。

「猶予は1年だけ。続けて猶予を受けるには手続きが必要だ。Aさんはそれをしていない」

 420万円の支払期限まで1カ月弱しかない。払えるはずがなかった。うろたえてもたもたしているうちに訴訟(支払督促)を起こされたといういきさつだ。

 冒頭触れたとおり、裁判は分割払いの和解で終わった。一見すると以前と変わらない。だが事情は圧倒的にAさんに不利になっていた。和解条件に「期限の利益」が書き込まれたためだ。

 これにより、支援機構は、Aさんが2度続けて延滞した場合、自動的に一括弁済を求めることができるようになった。

 将来なんらかの事情で払えなくなって一括弁済になると、延滞金が急速に増える。残元本が300万円なら、300万円に対する延滞金年3%の年9万円、月額7500円以上が加算されていく。

 Aさんはこれから20年間、50歳すぎまで「奨学金ローン」を最優先にして払わねばならないという重荷を背負ったことになる。もとはといえば、手続きの不備を理由に返還猶予が認められなかったのが始まりだから、理不尽というほかない。