加えて、深刻だと感じられているのは、特に大企業出身の中高年において「人間関係を上下の関係でしか見られない」傾向が強い点です。もちろん全員ではありませんが、社内では上司と部下、社外では発注者と業者という関係性しか作れない人がいて、ベンチャー企業とは相性が良くないのです。

 例えば、業務を発注している会社からの電話を受けたとき、平気で「“業者”から連絡だ」と言ってしまうような人。相手をパートナーと見なしていない傲慢さがにじみ出ていますが、長年にわたって上下の発想が染みついているので本人はなかなか自覚が持てません。

 ベンチャー企業やスタートアップでは、基本的に「横の関係」で組織が動いています。自社のリソースが限られているため上下にこだわっていたら物事が進まない上に、先端的なテーマにチャレンジしたり得意な業務に集中したりするには外部の優れたリソースの活用が必要だからです。パートナー企業のメンバーが社員同様の仲間となってプロジェクトを進めるのは珍しくありませんし、オフィスで業務委託の人が社員と席を並べ、チームの一員として働いていたりします。

 当社でもシステム構築と運用をお願いしている外部人材が常駐しており、非常に能力が高く、宝のような存在です。おのずと高い評価に見合った接し方になりますが、上下関係でしか物事を見ない人は、そんなことはお構いなしに下請け扱いしてしまいます。

「誰が金を払っているんだ」

 下請け扱いする人はそんな発想が根底にあります。しかし外部のパートナーは優秀であればあるほど、さまざまなところから引っ張りだこです。自分を尊重しない人と一緒に仕事をする必要などありませんから、それでは貴重なパートナーが去ってしまいかねません。そもそも社内外に限らず能力が高い、自律性の高い人材を尊重せず、モチベーションを潰してよいことなど一つもないでしょう。

 そうした上下でしか関係を作れない人は、ベンチャー企業やスタートアップでは周囲の協力を得られず、成果を出すのが難しくなります。

横の関係を構築できない人は
ベンチャー企業での活躍が難しい

「上下関係だけで物事を見る」悪弊は、トラディショナルな業界で比較的多く見受けられます。いわゆる下請けいじめが横行するような企業です。

 しかし、ベンチャー企業やスタートアップはもちろんのこと、もはや大企業を含む多くの企業で外部リソースの活用無しにビジネスを成長、発展させることは難しくなっています。社内においても雇用の多様化が進み、さまざまな背景を持った人たちと仕事を進める必要があります。

 こうした状況下で上下関係だけで物事を見て、横の関係を構築して組織やプロジェクトを動かすことができないのは致命的です。ベンチャー企業やスタートアップが大企業出身者に懸念するのは、まさにこの点です。