実は大卒じゃない!?
Aは半泣きで…

 それから1週間後。座学研修を終えたDは得意先回りをするB課長に同行していた。昼時になったので食堂に入り、ランチを取りながらいろいろと雑談を交わしていたのだが、Dの高校時代の話題になったところでB課長が尋ねた。

「そうそう…D君はA君と高校が一緒なんだよね?」
「はい。クラスメートでよく一緒に遊んでました。高校だけじゃなくて専門学校でも一緒だったんですよ。まあ、俗に言う『腐れ縁』ってやつですね」
「そうなんだ。えっ?」

 B課長はDの話に疑問を持った。

「君とA君は同じ専門学校に進学したのか?」
「はい、そうです。学科も同じでした」
「それで卒業後は2人とも就職したの?」
「ええ。A君は都内の旅行会社に、自分は実家に戻って地元の会社で働きました」

 B課長は帰社後、鍵付き書庫からAとDの履歴書を取り出すと大急ぎで学歴の記載欄を確認した。営業課採用の面接だったので面接官はB課長と部長、そしてC社長の3人だった。記載内容を見るとDは高校卒業後、専門学校へ進学し、卒業後前職に就いていた。対するAはDと同じ高校を卒業後、都内の私立大学に進学、卒業後は都内の旅行会社勤務となっていた。もしDの話が本当だったらAは学歴詐称したことになる。B課長は早速Aに事実確認をすることにした。

 そしてその日の夕方、B課長はAを会議室に呼び出すと早速話を切り出した。

「ところで、A君はD君と同級生で同じ高校を卒業したんだよね?」
「はい、そうですが…」

 Aはけげんそうな顔で答えた。

「その後、A君は都内の○○大学に進学し、D君は専門学校に進んだんだよね?」
「ええ。しかしそれが何か?」
「じゃあ、○○大学を卒業したことを証明する書類を見せてもらえないだろうか?」

 その言葉にAの表情がみるみるうちに暗くなった。その様子を見たB課長は続けた。

「実は今日D君とお昼を食べていたときに、2人は専門学校でもクラスメートだったと聞いたんだ。それって本当なの?」

 DはAが学歴を詐称して甲社に就職したことを知らなかったので、普通に事実を話しただけなのだ。Aは頭を下げた。

「課長、申し訳ございませんでした」

 B課長はガッカリした口調で言った。

「なぜ、履歴書の学歴を詐称したんだね?」
「Uターンはしたものの、コロナの影響で職探しに困っていたところに甲社の『営業職募集』の求人を見つけました。自分は営業が好きなので絶対に入社したかったんです。学歴の条件はありませんでしたが、専門学校卒より大卒の方が採用してもらえると思ったんです。それでつい…」

 Aは半泣き状態で頭を下げ続けた。