新型コロナの影響による従業員の解雇が大きな社会問題になりつつある。業績不振に陥った企業が社員を解雇するためには、4つの要件をクリアする必要がある。(社会保険労務士 木村政美)
地方都市にある創業40年の運送会社。従業員数は50名。
<登場人物>
A:甲社の2代目社長。40歳で独身。
B:新入社員。21歳。地元の短大を卒業後入社。クマのぬいぐるみが好きで、自分の机上に置きいつもかわいがっている。仕事ぶりはイマイチだが、癒やし系の容姿と性格をA社長が気に入り、毎日職場で顔を合わせるのを楽しみにしている。
C:新入社員。23歳。事務系専門学校を卒業後、他社で2年間事務職を経験。仕事を覚えるのが早く、てきぱきとこなすのでA社長に期待されている。
D:新入社員。25歳。大学卒業後、都内で勤めていたがUターンして入社
E:乙社の社長でA社長の飲み友達。40歳。
F:Eの親戚で社労士事務所を経営している。
想定ミスで
余剰人員を採用
3人いた事務担当の社員のうち、2人が3月末で退職したので急きょ新入社員を採用した甲社。しかしこれが、A社長の新たな悩みの種になった。
内定後や試用期間終了後に辞める人が出る可能性を考慮して3人の女性を採用したものの、誰一人辞めることなく、入社後1カ月間の試用期間を無事に終えてしまったからだった。
このままでは1人余剰な上に、雇っている以上給料も払い続けなくてはならない。会社としては困るのだが、解決策がわからずA社長は頭を抱えていた。
5月中旬の日曜日の午前中、会社で雑用をしていたA社長の携帯が鳴った。
「もしもし、Eだけど。今自宅?」
「いや、用事があって会社に来ているよ」
「おっ、それは都合がいい。久々に飲もうぜ。コロナの影響で近所の飲食店は皆閉まっているから、これから俺の会社に来いよ」