脇腹の痛みに不要な手術
間違った医療の果てに

 検討の結果、70代女性の治療は、入院ではなく通院が妥当ということになった。「薬を飲んでいれば」との条件付きであれ、身体は十分動かせるし、通院が無理な状況でもなかったからだ。

 そこで柴田医師は、そもそも脇腹の痛みの治療として受けた手術はまったく無用であったこと、あなたの痛みは真実だが、入院での治療は必要ないので通院で治すことを勧める、等々の話を伝えた。

 女性は落胆した様子で診察室を辞し、次回の予約はせずに帰って行った。

「仕方ありません。やはり、なんとしてもよくなりたいという方でないと、治療はできません。予約はとっても来られなくなる方が結構おられます。慢性痛の患者さんは、身体の痛み以外の問題を心の底にお持ちで、痛みというのはひとつの逃げ口である場合も多い。当センターの治療では、そうした心の問題にも迫るので、来たくないという気持ちが湧くのも当然だと思います。

 ここで治療する方は、それでも人生前を向こうと覚悟を決めた方々です」

 残念そうに語る柴田医師。千里山病院の「集学的痛みセンター」には、難治性の重症慢性痛患者のなかでも、こうした治療方針に合致する患者が入院している。それにしても、他の病院のほとんどが通院で治療している慢性痛をなぜ、入院で治療することにしたのだろう。

「入院しての治療は、慢性痛医療が進んでいる諸外国では当たり前のように行われています。私も実践してみて、改めてその有効性を実感しました。

 外来で治療する場合には、週に一回40分ないし1時間くらいのメニューを行ってもらうのですが、入院治療の場合は1日中、朝から晩までびっしりつまったプログラムを3週間、集中して行います。患者さんの反応は明らかに違います。

 週1回程度だと、その時はよくても、翌週には体の動かし方や痛みに対する恐怖心とかが元に戻ってしまい、また一からやり直しみたいになります。でも入院なら、毎日少しずつ改善し、3週間目には見違えるようになることも少なくありません。治療効果の高さは明白なので、ぜひとも日本中でも広めて行くべきだと思います」