今、最も注目を集める急成長企業ワークマンは、「しない会社」だ。
◎社員のストレスになることはしない
残業しない。仕事の期限を設けない。ノルマと短期目標を設定しない。
◎ワークマンらしくないことはしない
他社と競争しない。値引をしない。デザインを変えない。顧客管理をしない。取引先を変えない。加盟店は、対面販売をしない、閉店後にレジを締めない、ノルマもない。
◎価値を生まない無駄なことはしない
社内行事をしない。会議を極力しない。経営幹部は極力出社しない。幹部は思いつきでアイデアを口にしない。目標を定め、ノルマを決め、期限までにやりきるといった多くの企業がやっていることは一切しない。
とりわけ「頑張る」はしないどころか、禁止だ。
それでも業績は、10期連続最高益を更新中だ。
2020年3月期は、チェーン全店売上(ワークマンとワークマンプラス)が1220億円(前年同期比31.2%増)。営業利益192億円(同41.7%増)、経常利益207億円(同40%増)、純利益134億円(同36.3%増)となった。
なぜ、コロナ禍でも業績が伸び続けているのか。
なぜ、自分の頭で考える社員が急増しているのか。
このたびワークマン急成長の仕掛け人である土屋哲雄専務が、Amazonに負けない戦略を初めて語った処女作『ワークマン式「しない経営」』が10月21日発売前から話題になっている。
なぜいま、「しない経営」が最強なのか?
今回、ワークマンの土屋哲雄専務と早稲田大学大学院・ビジネススクールの入山章栄教授が初めて本書で対談。両者は何を語ったのだろうか。

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「知の探索」型と「知の深化」型
との幸せな出会い

土屋哲雄(つちや・てつお)
株式会社ワークマン専務取締役
1952年生まれ。東京大学経済学部卒。三井物産入社後、海外留学を経て、三井物産デジタル社長に就任。企業内ベンチャーとして電子機器製品を開発し大ヒット。本社経営企画室次長、エレクトロニクス製品開発部長、上海広電三井物貿有限公司総経理、三井情報取締役など30年以上の商社勤務を経て2012年、ワークマンに入社。プロ顧客をターゲットとする作業服専門店に「エクセル経営」を持ち込んで社内改革。一般客向けに企画したアウトドアウェア新業態店「ワークマンプラス(WORKMAN Plus)」が大ヒットし、「マーケター・オブ・ザ・イヤー2019」大賞、会社として「2019年度ポーター賞」を受賞。2012年、ワークマン常務取締役。2019年6月、専務取締役経営企画部・開発本部・情報システム部・ロジスティクス部担当(現任)に就任。「ダイヤモンド経営塾」第八期講師。これまで明かされてこなかった「しない経営」と「エクセル経営」の両輪によりブルーオーシャン市場を頑張らずに切り拓く秘密を本書で初めて公開。『ワークマン式「しない経営」』が初の著書。

土屋哲雄(以下、土屋) 入山先生の分厚い書籍『世界標準の経営理論』(ダイヤモンド社、832ページ)を読んで大変感激しました。私がこの10年間で読んだ300冊のビジネス書の中で、一番すごいと思った本です。

社内の推薦図書にして、志の高い社員に読んでもらいました。

この本の内容を2~3割くらい理解できたら、MBAの卒業生に負けないビジネス上の「思考の軸」をしっかり持つことができます。会社の将来の経営や意思決定に「深み」が出るはずです。

入山章栄教授(以下、入山) ありがとうございます。自分で言うのもなんですが、世界のメジャーな経営理論がカバーされているとても珍しい本だと思います。

土屋 特に「『両利き』を目指すことこそ、経営の本質である」は、私とワークマンとの関係性を考えさせられました。

入山 世界の経営学で、いま最も研究されているイノベーション理論の基礎は、「両利きの経営」です。

基本コンセプトは「まるで右手と左手が上手に使える人のように、『知の探索』と『知の深化』について高い次元でバランスを取る経営」を指します。

土屋 じつはワークマンは「知の深化」型の会社で、私は「知の探索」型の人間です。

この組合せは千載一遇だったと思っています。

入山 面白い見方ですね。