”意識が高い人”ほど、上司や組織に「今すぐ改革を進めましょう!」と詰め寄ります。
しかし、そういう人たちが本当に「改革」「変革」を実現させているでしょうか。口だけが達者で、結果は伴ってない。加えて、「あの上司が認めてくれない」「わかってない」「じゃあ、別のルートで行こう」と対立的に物事を進め、事態を悪化させる。
あなたの職場にも「意識は高いけど、品質が低い人」がいるはずです。
ITベンチャーの代表を10年以上務め、現在は老舗金融企業のCTOとして企業改革を実行。『その仕事、全部やめてみよう』の著者・小野和俊さんに、変化の時代に必要な「コミュニケーション」「仕事人としてのスキル」について聞いてみました。
(取材・構成/イイダテツヤ、撮影/疋田千里)

人を傷つけずに問題点を指摘するには?

――『その仕事、全部やめてみよう』では、「攻撃的コミュニケーション」ではなく「マイルドなコミュニケーション」を勧めていますね。これはなぜでしょうか?

小野 僕はよく「かわいく、おもしろく言うのが大事」と言っています。

 エンジニアの世界では、イマイチなコードを書くと「クソコード」なんて言われるんです。でも、そんな攻撃的な表現じゃなくて、かわいい「ひよこ」になぞって「ひよコードだね」って言おうと。

 ひよコードとは、「ひよこ」と「コード」(ソースコードの略)をかけ合わせた言葉です。ひよこはかわいらしく人から愛される生き物で、そしてこれから成長していくことを暗黙のうちに期待されています。

 つまり「伸びしろしかない」んです。だからネガティブなことを言わざるを得ないとき、精いっぱいの愛情を込めて「ひよコードだね」と伝えよう。そんな話を本にも書きました。

「生意気だけどかわいがられる人」は何をしている?

 どんな組織でも「あの上司が認めてくれない」「わかってない」「じゃあ、別のルートで行こう」という感じで、対立的に物事を進めようとする人っているじゃないですか。「相手はわかってくれない」前提で、ガードを上げて攻略しに行く。賛成している人は誰で、反対している人は誰。「よし、あいつを攻略しに行こう」みたいなタイプです。

「生意気なんだけど、認めざるを得ない」と言われるほど突き抜けた存在なら、それでもいいと思うんです。でもできれば、「かわいく、おもしろく言う」コミュニケーションのほうがいい。尖っていても、それができる人もいます。

 対立的に相手を攻略するなんて、非効率だし、失敗する確率が高いんです。仮に成功しても、恨まれることも多く「あいつ、うまくやりやがって」「次は絶対否定してやる!」って感情になりやすい。

 こういうやり方って基本的にうまくいかなくて、結果、何も変えられないんです。

――ビジネス書を読み漁って、新しい価値観や考え方をアップデートしている人ほど、鋭い言い方で、組織や上司に変化を求めるケースは多そうですね。

小野 何かを変えようと思うなら、正論を振りかざして、相手の喉元にナイフを突きつけて「今、変わらないと、会社死にますよ」なんてやっちゃダメなんです。

 たとえば、世の中がデジタル化されていく流れがある中で、「デジタル最強!」と思い過ぎて、デジタルでないものを徹底的に否定する人っていますよね。

 でも、それでは全然うまくいかなくて「改革を急ぐなら、改革前の状態に敬意を払わなければいけない」っていうのが僕が考える成功の法則なんです。

小野和俊(おの・かずとし)
クレディセゾン常務執行役員CTO
1976年生まれ。小学4年生からプログラミングを開始。1999年、大学卒業後、サン・マイクロシステムズ株式会社に入社。研修後、米国本社にてJavaやXMLでの開発を経験する。2000年にベンチャー企業である株式会社アプレッソの代表取締役に就任。エンジェル投資家から7億円の出資を得て、データ連携ソフト「DataSpider」を開発し、SOFTICより年間最優秀ソフトウェア賞を受賞する。2004年、ITを駆使した独創的なアイデア・技術の育成を目的とした経済産業省のとり組み、「未踏ソフトウェア創造事業」にて「Galapagos」の共同開発者となる。2008年より3年間、九州大学大学院「高度ICTリーダーシップ特論」の非常勤講師を務める。2013年、「DataSpider」の代理店であり、データ連携ソフトを自社に持ちたいと考えていたセゾン情報システムズから資本業務提携の提案を受け、合意する。2015年にセゾン情報システムズの取締役 CTOに就任。当初はベンチャー企業と歴史ある日本企業の文化の違いに戸惑うも、両者のよさを共存させ、互いの長所がもう一方の欠点を補う「バイモーダル戦略」により企業改革を実現。2019年にクレディセゾン取締役CTOとなり、2020年3月より現職。「誰のための仕事かわからない、無駄な仕事」を「誰のどんな喜びに寄与するのかがわかる、意味のある仕事」に転換することをモットーにデジタル改革にとり組んでいる。著書に『その仕事、全部やめてみよう』がある。

 相手に敬意を払って、きちんと相手を理解する。

 結局はこれが近道なんです。