人間関係のシンプルな本質
でも、今はどうしても、衝突が起こります。歯車が噛み合っているときはいいですけど、いろいろ問題や違いがあるのに、そこを無理やり噛み合わせていかなきゃいけないので、摩擦も生まれますし、刃こぼれなんかも一部には起こります。
でも、こういうときこそ、攻撃的に言うんじゃなくて「マイルドなコミュニケーション」が必要です。大事なのは「対立」ではなく「融和」なんですよね。
よく「破壊的創造」って言い方をしますけど、大事なのは「破壊的創造」ではなく「協調的創造」だと僕は思っています。
――実際に、小野さんが体験した「相手に敬意を払い、理解しようとした」からこそうまくいった話で、印象に残っているものはありますか。
小野 僕がアメリカから帰ってきて、ITベンチャーを立ち上げたさらに後、セゾン情報システムズのCTOに就任した頃の話なんですけど、ある50代のエンジニアの方が「COBOL」っていうプログラム言語を使っていたんです。
トレンドで言うとひと昔前の言語で、僕は「COBOL」を書いたことがなかったんです。
でも、その人が書いているのを見てたら、すごくおもしろそうで「今度、それ教えてくださいよ」って言いに行ったんです。
そしたら、そのエンジニアの方は「えっ、本気ですか? そんな将来性がある言語とかじゃないですし、小野さんが勉強するようなものじゃないですよ」と言ったんです。
でも、僕としては「将来性があるとか、ないとかじゃなくて、おもしろそうだから教えてください」っていって、実際にいろいろ教えてもらったんです。
もちろん僕も相手に取り入ろうとしたんじゃなくて、純粋に「おもしろそうだから、教えてもらいたい」と思っただけで、実際にいろいろ教えてもらうと、新しい発見もあって、楽しかったんです。
でも、やっぱりそういうコミュニケーションができれば、相手も悪い気はしないですよね。実際、そういう関係を築けたことで、その後のやりとりもスムーズになったっていうのはありました。
アメリカ帰りで起業して、会社も成功したようなヤツが、突然CTOとしてやってきたら、そりゃあ相手だっておもしろくないですよね。そんなときこそ「対立的になるんじゃなくて、相手を理解しようとする」コミュニケーションがやっぱり大事なんだと思います。
こうしたコミュニケーションができないと、結局は、何も成し遂げることができず、「意識は高いけど、品質低い人」になってしまうんじゃないでしょうか。