地域に密着した「老舗」という信用は厚いが、狭い市場と限られた経営資源では、業績改善を図る方策は限られる。大手資本への依存も見込めず、多くの地場百貨店は岐路に立っている。

 投資ファンドの支援に活路を求めたが、業績が好転しないばかりか、内紛騒動まで勃発した大沼(山形市)の破産(2020年1月)は業界に衝撃を与えた。1700年の創業、業歴320年という老舗中の老舗だが、凋落の一途をたどり、経営権を巡る紆余曲折の末に破産した。

 ひっそりとのれんを下ろす地場百貨店は、大沼だけではない。

 甲府駅前に立地していた山交百貨店(甲府市)は2019年9月に閉店し、その後は縮小して保険代理業務などを手掛けている。1910年に柳源呉服店として岐阜で創業したヤナゲン(大垣市)も2019年に百貨店事業を終了、不動産賃貸業に業態転換した。

 愛知県の東三河地区を拠点としていたほの国百貨店(豊橋市)も今年3月に閉店し、5月に解散した。仕入先などへの一般債務の支払いはできたが、金融債務の返済が難しく、最終的には特別清算を申請した。

 地場百貨店の再建を阻むのが、動線の変化と老朽化問題だ。市街地の中心部に出店する地場百貨店は、一時は地域の旗艦店として名実ともに地域経済を代表する企業でもあった。だが、地方都市の空洞化が進み、郊外に出店したショッピングモールなどに人が流れるのをつなぎ止められなかった。

 さらに、“老舗”の裏返しで設備の老朽化も大きなハンディになった。百貨店の多くはバブル前に建てられ、古びた設備がネックになっている。集客のためのリニューアル資金の捻出も厳しく、耐震工事の費用すらままならない。そんな地場百貨店も存在する。

 かつて地域一番店を標ぼうした地場百貨店は、地域の第一地銀をメインバンクにするケースが多い。だが、名門と呼ばれた百貨店も時代の流れに取り残されている。昨今の金融機関は、企業の将来性を「事業性評価」に基づいて判断する。先行きの見通しが厳しい百貨店は、設備投資の資金調達すら難しい。