政府の金融支援策で、3兆円もの投融資枠を獲得した官民ファンドの産業革新投資機構(JIC)。コロナ禍で、どんな企業の支援を想定しているのか。競争力強化と救済のバランスをどう取るか。特集『開戦 ファンド大買収』(全10回)の最終回では、JICの横尾敬介社長に投資方針を聞く。(ダイヤモンド編集部 村井令二)
コロナで資本不足の企業に
JICが支援に乗り出すことも
――政府の第2次補正予算で、産業革新投資機構(JIC)の政府保証借入枠がこれまでより1.5兆円拡充されました。どう活用していきますか。
既存の投融資枠に1.5兆円が追加になったが、ここから子会社のINCJがすでに投融資で使っている分を差し引くと約3兆円になる。これがJICとして使える資金枠になる。
追加の1.5兆円の枠は、今後コロナ禍で問題が生じかねない企業のために予防的に追加されたものだと認識している。この前提に当てはまる具体的な案件が出てこない限りは、その追加枠から資金を投入することにはならない。
つまり、われわれの自由裁量で使える資金ではない。コロナ危機に対するセーフティーネットとして、日本にとって影響がありそうな企業が資本不足に陥ったときに、初めてこの枠が発動されるのだと私は理解している。
私は2008年のリーマンショック当時、みずほ証券の社長として危機に直接対峙したが、コロナ危機はそのときよりもはるかに広範囲で、短期間で元に戻る性質のものではないと実感している。
感染者がまた増えており、最終的にはワクチンや治療薬が開発されて広く使われるようにならない限り、「7~8割の経済」が続くという見方が必要だ。
コロナによって需要が蒸発した業界もあるが、当面はコロナ前に戻ることはないだろう。この間に資金繰りが厳しくなり、資本不足に直面した企業に、われわれが対応していかなければならないこともある。
――今後、政府からコロナで危機に陥った企業の具体的な救済案件が持ち込まれることになるのでしょうか。