ユニクロやニトリといった量販店が都心の百貨店に入居している光景は、もはや日常のものとなった。アパレル業界との共依存関係から抜け出せず沈み続けた百貨店は、新型コロナウイルスの感染拡大による減収で存続が危ぶまれる。特集『没落貴族 アパレル・百貨店』(全9回)の最終回では、テナントリーシングに頼った揚げ句、業界再編の体力さえ残されていない百貨店の現状をレポートする。(ダイヤモンド編集部 岡田 悟)
国内百貨店の礎「日本橋三越」にビックカメラ
ちぐはぐなテイストに売り場の不協和音
スローテンポのピアノ曲にアレンジされた「♪ビ~ックビックビックビックカ~メラ~」のメロディー。さまざまな家電が並ぶ売り場は、他のビックカメラの店内と大して変わらない。ここは百貨店という“上質な空間”だと主張したいかのごとく、店内で流れる音楽だけは“日本橋三越風”に味付けした苦心の跡が見て取れる。
ただせっかくのメロディーも、売り場のそこかしこで鳴り響く各商品のプロモーション動画の音声と混ざり合い、独特の不協和音を形成しているのが残念だ。
日本の百貨店の礎とされる日本橋三越本店。その新館に2月7日、テナントとして「ビックカメラ日本橋三越」がオープンした。ビックカメラらしい品ぞろえと、日本橋三越流の丁寧な接客を生かす「クオリティータイムゾーン」を顧客に体験させることを目指している。
三越伊勢丹ホールディングス関係者の間でも、「近くにビックカメラ有楽町店がある。家電を買いにわざわざ日本橋まで来るだろうか」との冷ややかな声が漏れる。他のビックカメラにはない “百貨店らしい接客”の象徴である2脚のソファは、売り場の隅に雑然と置かれていた。
衣料品を中心に衣食住に関する商品を取りそろえ、買い手に非日常の“ハレ”の空間を体験させる百貨店のビジネスモデルが破綻していると指摘されて久しい。