文系のなかには、理系コンプレックスを抱えている人は少なくありません。しかし、「読書においては文系がまさっている」と、この本に出合うまではそう思っていました。しかし……。新刊『理系読書 読書効率を最大化する超合理的サイクル』は、理系が実践している合理的な方法を読書に応用した技術です。著者は、東大生500人以上、医大生を2000人以上輩出した元駿台予備学校ナンバーワン化学講師で、バリバリの理系。本をまるで理科の実験のように扱い、最短最速でスキルハントする。インプットとアウトプットが速すぎて、これにはもうお手上げです。「速く読むこと」や「大量に覚えること」を目的とする読書術とは、一線を画した内容。最短最速で著者の経験知やノウハウを自分の頭にインストールし、自分の問題解決に役立てる至極の読書術です。

ビジネス書を読んでも「成果が出ない」と嘆く人がやっていないことPhoto: Adobe Stock

著者の主張を疑ってみる

 本をスクリーニングして旨味を抽出し、自分の問題意識に合った部分を精読するのが『理系読書』の特徴ですが、今度はその情報をあえて疑ってみます。

 なぜ疑うのか。著者がうそをついていると思っているわけではありませんが、理系は常に書かれている情報に対し、事実かどうか、科学的根拠があるか、ロジックに誤りがないか、ポジショントーク(自分の立場を利用して自分に有利になるような記述)になっていないか、目を向ける習慣があります。

 また、何らかのノウハウなら、「著者の置かれたシチュエーションで、そのノウハウを実践したらうまくいった」だけであり、読者も同様にうまくいくとは限らないのです。

 その本にあるノウハウなどの情報を鵜呑みにしたまま「やってみる」の実行フェーズに移ると、無駄な失敗をする確率が高くなります。

 そこでまずは、抽出した情報に厳しい目を向けて精査する作業が必要となります。

 抽出した情報を精査する際、ベースとなる考え方は「クリティカルシンキング」です。

 クリティカルシンキングとは、「他人の主張を鵜呑みにすることなく、吟味し評価する方法論」(『科学技術をよく考える クリティカルシンキング練習帳』伊勢田哲治・戸田山和久・調麻佐志・村上祐子編、名古屋大学出版会)です。クリティカルシンキングで論文や本を読むことを、「クリティカルリーディング」ともいいます。科学者の間では、クリティカルリーディングは必須のスキルとされています。

「クリティカルリーディング」を実践するうえでやるべきことは、まず情報を、

・著者の主張(解釈)
・ロジック(著者の主張と根拠を結びつける論理)
・根拠(理由や事実)

 に仕分けることです。

 そのうえで、精読しながら、「それって、本当?」「なぜ、そう言えるの?」と疑問を持ちながら文章を読み進めていきます。

「事実のように書いてあるが、これは実は、著者の思い込みなのではないか?」
「主張と根拠、つながっていない?」

 といったように、ある種うがった見方で読んでみるのです。

 たとえば、書かれた文章が「事実」なのか、それとも「著者の解釈」なのかがはっきり示されていない、あるいは両者が混在するなどしていて、どちらか判別できないようなら、その文章は鵜呑みにしないようにすべきでしょう。