文系のなかには、理系コンプレックスを抱えている人は少なくありません。しかし、「読書においては文系がまさっている」と、この本に出合うまではそう思っていました。しかし……。新刊『理系読書 読書効率を最大化する超合理的サイクル』は、理系が実践している合理的な方法を読書に応用した技術です。著者は、東大生500人以上、医大生を2000人以上輩出した元駿台予備学校ナンバーワン化学講師で、バリバリの理系。本をまるで理科の実験のように扱い、最短最速でスキルハントする。インプットとアウトプットが速すぎて、これにはもうお手上げです。「速く読むこと」や「大量に覚えること」を目的とする読書術とは、一線を画した内容。最短最速で著者の経験知やノウハウを自分の頭にインストールし、自分の問題解決に役立てる至極の読書術です。

読書の正解は現実世界における変化量でわかるPhoto: Adobe Stock

読書の効率を測る公式とは?

 読書の効率について、さらに考えてみましょう。読書をするなら、効率よく読んだほうがいいものです。では、読書の効率とは何なのか。

 読書の効率は、「得られた効果」を「投じたコスト」で割ることで求めることができます。式にすると、このようになります。

 読書の効率(コスパ)=得られる効果÷投じたコスト

 この式で、「読書の効率」をより大きくするための方法は2つあります。

 1つは、分子(得られる効果)を大きくすることです。得られる効果は、「現実世界における変化量の大きさ」と言い換えることができます。

 本を読むのはあくまでもバーチャルな体験であり、読んだだけでは現実世界には何の変化も起こりません。しかし、本の内容を実践に移せば、現実世界に何らかの変化を起こせます。その変化が大きければ大きいほど、得られる効果が高いということです。

 たとえば、株式投資の本を読んで投資したときに、1万円だけ儲かるよりも100万円儲かったほうが、効果があったといえます。

 マネジメントに関する本を読んだ後に、日々の部下の管理に使えるテクニックを、1つよりも2つ、3つと身につけられたほうが、より大きな変化が表れたといえます。

 したがって、読書の効率を考える際は、得られる効果(変化量の大きさ)に目を向ける必要があるのです。

 読書の効率を高めるもう1つの方法は、分母(投じたコスト)を小さくすることです。つまり、より低いコストで読書をすることです。

 この場合のコストとは、「お金」「時間」「労力」を指します。

 お金や時間についてはわかりやすいでしょう。得られる効果が同じとき、類似の本を何冊も買うより1冊読むだけで実践できたら、後者のほうが効率のいい読書だといえます。

 1冊の本を読むのにかける時間も、短いほうが効率はいいですよね。

 では、コストのもう1つの要素である労力についてはどうでしょうか。ページを指でめくるのも労力の1つですが、それよりも私は「ストレス」が最大の労力だと考えています。

 文芸書やノンフィクション、趣味の本などを娯楽として読むのは純粋に楽しい行為ですが、ビジネス書や専門書など実利目的の本を読むことは、必ずしも楽しいとは限りません。

 必要に迫られて読むことも多いので、ページを開くのがおっくうだったり、仕事で忙殺されているときの読書は苦行のように感じたりもします。

 後ろ向きな気持ちで本を読むと、どっと疲れてしまいます。たとえ読書によって何らかの効果を得られたとしても、読むときに感じるストレスが大きければ、その読書の効率は高いとはいえないのです。

 では、ストレスを抑えつつ読書をするにはどうすればいいか。自分の集中力が続く間だけ読書すればいいのです。

 つまり、集中力が切れたら本を閉じてしまう。15分集中できなくてもかまいません。読むのがしんどいと感じた瞬間に、読書をいったんやめてしまいましょう。

 そうすることで「この後もまだまだ読み続けなくちゃ……」のようなストレスを減らし、結果的に読書の効率(コスパ)を高めることができるのです。