定価でアマゾンに負けない

ワークマン急成長の仕掛け人が、巨人Amazonに負けない戦略を明かす土屋哲雄(つちや・てつお)
株式会社ワークマン専務取締役
1952年生まれ。東京大学経済学部卒。三井物産入社後、海外留学を経て、三井物産デジタル社長に就任。企業内ベンチャーとして電子機器製品を開発し大ヒット。本社経営企画室次長、エレクトロニクス製品開発部長、上海広電三井物貿有限公司総経理、三井情報取締役など30年以上の商社勤務を経て2012年、ワークマンに入社。プロ顧客をターゲットとする作業服専門店に「エクセル経営」を持ち込んで社内改革。一般客向けに企画したアウトドアウェア新業態店「ワークマンプラス(WORKMAN Plus)」が大ヒットし、「マーケター・オブ・ザ・イヤー2019」大賞、会社として「2019年度ポーター賞」を受賞。2012年、ワークマン常務取締役。2019年6月、専務取締役経営企画部・開発本部・情報システム部・ロジスティクス部担当(現任)に就任。「ダイヤモンド経営塾」第八期講師。これまで明かされてこなかった「しない経営」と「エクセル経営」の両輪によりブルーオーシャン市場を頑張らずに切り拓く秘密を『ワークマン式「しない経営」』で初めて公開。本書が初の著書。

 天敵アマゾン対応の前提条件として重要なことは、アマゾンと同じ土俵に乗らないことだ。

 そのためには、まず難しい課題だが、定価で負けないことである。

 たとえば、One to Oneマーケティングに手を出すとコストばかりかかってしまう。

 それより自社の強みで勝負する。

ワークマンの場合は高機能・低価格製品と全国885の店舗網だ。

 PB製品の場合、直接比較はできないが、類似製品であれば、定価で決してアマゾンに負けない。

価格が同じならワークマンのほうが高機能だし、同等の機能ならば安い。

 作業服でアマゾンができないことは供給保証だ。

法人が作業服を一度選ぶと、通常5~10年間、同じモデルを使い続ける。

 生地が廃版になる恐れもあり、材料や副資材ベンダーの保証も必要だ。

これも徹底的にやりきる。

 ワークマンの作業服は、アマゾン対策として10年間の供給保証をつけている。

 7Lまでの大きな体型や横幅型の体型(柔道体型、ラグビー体型など)用の在庫を保証するのは大変だ。横幅型の体型の人が一人も入社しないこともある。最後にはかなりの廃棄が出る。