会議で活発な意見交換ができないことに悩む組織は少なくない。プロファシリテーターの園部浩司氏は、その要因はファシリテーターの「質問」にあることが多いと指摘する。議論を盛り上げるいい質問とは、どんな質問なのだろうか。園部氏が課題と解決のポイントを解説する。
ビジネスパーソンに会議にまつわる悩みを尋ねると、必ず出てくるのが「活発な議論ができない」です。ファシリテーターが話しかけているのに、自分の意見をにごす人がいる一方で、突然関係のないことを話し始める人がいて反論が起きて、議題とは関係ないところでヒートアップ……など、会議の進行を担当したことがある人なら、誰でも一度は経験しているでしょう。現在、ウェブ会議が増えていますが、リアルでも活発な議論ができないメンバーがオンラインで集まっても、急に意見が出るわけがありません。
プロファシリテーターとして今も大小さまざまな企業の会議進行を担当する私は、これまでに6600人以上のビジネスパーソンにファシリテーションの指導をしてきました。その中で、リアルでもオンラインでも活発な議論が生まれない理由の一つに、ファシリテーター自身が「いい質問をしていない」ことがあると気付きました。つまり、参加者が答えにくい質問を押しつけているため、議論が深まらないのです。本稿では、活発な議論を生み出す質問とはどんなものかを事例を元にご説明していきます。
議論が散漫になってしまう原因は
「質問」にあった!?
ある飲料メーカーでは、今年の新型コロナウイルスの流行により、従来出勤していた社員の8割以上のテレワーク化を推進することになりました。しかし、いざテレワークをしてみると、総務部ではさまざまな課題が発生しました。そもそも出社しないとできない印鑑処理や通勤手当の取り扱いなどの事務作業が多い上に、コミュニケーションの希薄さによる行き違いやミスが多発するようになったのです。
そこで、テレワークにおける最適な働き方を実現するための「テレワーク推進プロジェクト」が発足し、総務部のA課長がリーダーに任命されました。さっそく、各部門からメンバーを選出し、1回目のプロジェクト会議をオンラインで開催しました。A課長は「課題意識を持った改革に前向きなメンバーが集まっているのだから、会議も建設的な議論ができるだろう」と思っていました。
しかし実際にやってみると、確かに意見は出るものの議論は堂々めぐりとなり、なかなか結論が出ません。そんな調子ですから、2回目以降は、だんだん発言者が少なくなり、重苦しい雰囲気になることが多くなってしまいました。テレワークが現在進行形で実行される中、早急な課題解決が求められる状態になっていることもあり、A課長は気が焦るばかりでした。
それでは、どのような会議が繰り広げられているか、少しのぞいてみましょう。