大学受験の最難関である東大理三に、4人のお子さん全員を合格させた佐藤亮子さん。2015年の秋に佐藤さんにお会いして以来、取材や講演などで軽く100回以上お話を伺った。驚くのは話の引き出しの多さだ。
今までに幼児教育の重要性、中学受験や大学受験のサポート方法、子育て論などについてたくさんお話を伺ったが、新著『東大理三に3男1女を合格させた母親が教える 東大に入るお金と時間の使い方』は「お金と時間」という新しい切り口。「佐藤さんはどのようにお金と時間を使ったか」に加え、子どもの学力を伸ばすためのさまざまな佐藤ママメソッドが紹介されている。
第一子であるご長男を授かった時、佐藤さんは「子どもの未来の可能性を拓くために重要なのは教育。本人が希望する道に進めるよう、能力を最大限に伸ばしてあげたい」と思ったという。ご長男が生まれる前から小学校の教科書に目を通し、童謡集を購入するなどの準備を始めた佐藤さんは、教育費は惜しまず、時間の無駄を省いてきた。
わが子の幸せな未来のために学力を伸ばしたい、わが子を東大に入れたいと考える方はもちろんのこと、社会人や専業主婦にとっても役に立つ情報が満載だ。5回に分けて、佐藤さんの魅力、独自の子育て、書籍の特徴などについて紹介したい。(教育ジャーナリスト 庄村敦子)

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 教育記事を書き始めてからの約30年間に、数百人の東大合格者(高3生)、東大生、東大生の親の取材をしてきた。東大合格者数が少ない地方の公立高校出身の東大生も取材したが、首都・関西圏では、圧倒的に多いのが「中高一貫校」の出身者だ。

 毎年、大学通信が大学別に高校の合格者数を調査し、ランキング表を作成している。東大理三に3男1女を合格させた佐藤亮子さんの著書『東大理三に3男1女を合格させた母親が教える 東大に入るお金と時間の使い方』にも、「東大合格者数トップ20(2020年度)」と「国公立大学医学部医学科合格者数トップ20(2020年度)」が掲載されている。

 その表を見ると、東大合格者数のトップテンはすべて中高一貫校で、20校中16校が私立の中高一貫校、2校が国立の中高一貫校だ。一方、国公立大学医学部合格者数のトップテンはすべて私立の中高一貫校で、20校中16校を私立の中高一貫校が占めている。

 また、東京大学学生委員会が公表している「学生生活実態調査報告書」の2018年の調査結果をみると、出身校は53.8%が「私立の中高一貫校」だ。

 奈良県在住の佐藤さんの3人の息子さんは関西のトップ進学校・灘(兵庫)、お嬢さんは関西の共学・女子校でトップの洛南(京都)を卒業している。2020年度の両校の東大理三の合格者数は、灘が14人で全国1位、洛南が3人で全国5位だ。

 私立の中高一貫校に入学するためには、小学生のときに中学受験塾に通うことになる。塾での成績上位者は、幼少期から幼児教室に通っていることが多い。

 私の2人の娘が通った日能研でも、6年生の最上位のクラスでは、ほとんどの生徒が幼児期に公文式教室に通っていて、算数が得意な生徒が多かった。

 また、佐藤さんの4人のお子さん全員が通った大学受験塾・鉄緑会は、知る人ぞ知る東大に強い塾だ。

 東大の合格者を取材すると、さまざまなルートがあるが、佐藤さんのご家庭のように「幼児教室→中学受験塾→中高一貫校→大学受験塾→東大」というのが王道だと言えよう。佐藤さんの例を見ながら、一つひとつ紹介しよう。

【幼児教室】
 いろいろな幼児教室を見学したうえで、佐藤さんがお子さんたちを通わせたのが公文式教室。決め手となったのは、教材のプリントだ。「少しずつ難易度が上がるように工夫されていて、無理なくレベルアップできる」と感じ、ご長男を1歳半から通わせた。その頃に生まれた次男さんが8ヵ月になった頃、公文の宿題をしている兄の邪魔をするのを見て、「自分のプリントが欲しいのだな」と思ったという。

 生後8ヵ月の次男さんも教室に通わせたときには、周りのお母さんたちから、「お金をドブに捨てるようなもんじゃない?」と言われたが、太い鉛筆を持って楽しそうに殴り書きし、ご長男の宿題の邪魔をしなくなったため、「次男が楽しそうだからいいよね!」と思ったそうだ。

 三男さんもお嬢さんも1歳頃から公文を始め、全員が楽しくプリントに取り組んだ。4人のお子さんたちは、物心つく頃には鉛筆を持って勉強する習慣がついていたのだ。

【中学受験塾】
 佐藤さんが塾選びをするときに調べたのが、「進学実績」「テキスト内容」「通いやすさ」「口コミ」。総合的に判断して浜学園に決めたが、一番重視したのは「口コミ」。幼稚園の同級生の母親が、「先生が熱心で授業がすごくいい」と言ったのが、決め手となった。

 算数のテキストは、問題が基礎、応用、発展と段階的に構成されていて、計算問題を順番に解いていくうちに学力が上がっていくように作られており、テキスト作成者の子どもに対する愛情が感じられたそうだ。

【中高一貫校】
 一般的に、中高一貫校は学習進度が早く、高2の終わりぐらいに高3の授業が終わる。高3のときには大学入試対策の演習を行うところが多いため、大学受験では有利だ。

 中高一貫のトップ校では、教員が東大をはじめとする難関大学の入試と指導方法を熟知しているうえ、「原則6年間持ち上がり」という「学年団制」の学校が少なくない。大学入試の問題を教えることができる教員が、中1からの6年間、生徒の性格、得意科目、不得意科目などを把握して指導するため、学力が伸びる。

 また、東大合格者数が多い学校では、部活などの先輩がロールモデルとなる。東大は身近な先輩が行く大学であり、「あの先輩が合格したのだから、自分も頑張ろう」という気持ちになる。また、東大を目指す同級生たちと切磋琢磨して、お互いの学力をアップできる。

 佐藤さんのお子さんたちは部活動にも打ち込んだ。ご長男は高3の7月までサッカー部。次男さんは中学時代に軟式野球、高校時代は友人と漫才コンビを結成して、高1・高2の文化祭で漫才を披露。M-1グランプリの予選にも出場した。三男さんは高2の夏まで卓球部。お嬢さんは中学時代に水泳部。4人とも部活の友達関係がよくて、充実した楽しい中高時代を送った。

 佐藤さんのお子さんは全員が第一志望校に合格したが、残念ながら不合格になるお子さんの方が多いのが現実だ。私は、東大や国公立大学医学部に多数の合格者を出している全国の進学校のほとんどに、訪問取材か電話取材をしている。たとえ第一志望校に不合格でも、御縁があった学校で一生懸命勉強すれば、東大に合格することは可能だ。

 学校によって校風や大学受験のサポート、ICT教育(情報通信技術を活用した教育)の導入などは異なる。コロナ禍だが、文化祭や体育祭、学校説明会などを実施する学校は多い。ホームページで確認したうえで足を運んで、志望校を決めたい。

【大学受験塾】
 佐藤さんのお子さんたちが通ったのは鉄緑会で、東京と大阪にある。2020年度の東大の合格実績は、東京大学受験指導専門塾である東京校が439人で、このうち40人が理三に合格。東大・京大・国公医受験指導専門塾である大阪校の東大合格者数は76人で、このうち19人が理三に合格した。理三の定員は100人だから、両校合わせると約6割が鉄緑会出身者だ。

 東京校には、中1の4月に限り、開成、桜蔭、筑波大学附属駒場など13の指定校の生徒は無試験で入会できる「指定校制度」がある。今年の8月現在の在籍生徒数は開成964人、桜蔭805人、筑波大学附属駒場533人など。トップ進学校の生徒が共に競い合い、学ぶ。他校の生徒も入会選抜試験に合格すれば入会できるが、ハードルは高い。

 県によっては、名門の中高一貫校がない。その場合には、寮がある中高一貫校、親戚の家から通える中高一貫校を受験するか、県立のトップ進学校を目指すことになる。

 中学受験をしない場合に、佐藤さんがオススメしているのが、検定試験の受験だ。英検Jr.(旧児童英検)、英検(実用英語技能検定)、算数検定(実用数学技能検定)、漢検(日本漢字能力検定)などに合格すると達成感が得られ、次の級の合格が目標となる。

 特に推奨しているのが、「英検Jr.」と「英検」。高校受験の5教科のなかで、英語が1番仕上がるのに時間がかかるからだ。英検はテキストや問題集があり、独学でも勉強しやすいため、中3の時点で準2級か2級に合格するのが理想だという。

 前出の「学生生活実態調査報告書」を見ると、東大生の実家の世帯年収額は、1550万円以上が16.1%、1250万円以上~1550万円未満が12.2%、1050万円以上1250万円未満が11.2%、950万円以上1050万円未満が21.3%、750万円以上950万円未満が13.5%、450万円以上750万円未満が12.5%、450万円以下が13.2%となっている。

 950万円以上の家庭が6割を超えているが、一方で450万円未満の家庭も1割以上いる。親のサポートと本人の努力次第では、年収が高くなくても、東大に合格できるのだ。第3回以降は、佐藤さんの「お金と時間の使い方」、佐藤ママメソッドを紹介する。ぜひ、参考にしてほしい。