新しい特別区の財源と権限は
ムダと非効率が増えるだけという現実

 長年にわたって大阪市の生活保護の現場で働いてきた経験を持つ社会福祉士の谷口伊三美さんは、不安が先走る筆者に、「生活保護や困窮者施策の先行きについて、具体的なことは何も示されていません」と釘をさす。福祉や保健、防災など、市民生活に直接かかわる事柄の多くについて、先行きの内容は全く示されていないからだ。しかし、楽観しているわけではない。生活保護について気になることは、まず要員不足だという。

「大阪市は現在でも、国の定める標準数(都市部ではケースワーカー1人あたり80世帯)の約7割しか、ケースワーカーを配置していません。ケースワーカー1人が120世帯以上を担当するのは普通で、中には150世帯以上を担当する職員もいます。とても、丁寧なケースワークができる状態ではありません」(谷口さん)

 特別区になれば、改善されるのだろうか。

「それは、全く期待できません。特別区への移行では、現在の職員数を増やさないことが基本です。これまで大阪市全体で行っていた、職員の研修や育成、嘱託職員の採用、ホームレス支援などの事務は、4つの特別区で個別に行われることになる可能性があります。分散すると、手間も人もより多く必要になります。人員不足はより一層、深刻になる可能性があります」(谷口さん)

 これでは、ムダの削減どころではない。しかし、大阪都構想でアピールされるポイントの1つは、大阪府と大阪市の二重行政の解消だ。そのメリットはないのだろうか。

「現在は、大阪市全体をカバーする保護課が市の本庁にあり、各区の生活保護行政をバックアップしています。研修や非常勤職員の採用などに加えて、国との窓口も本庁が担っています。国からの通知の解釈や国への要望も本庁が行います。特別区になると、こうした機能が各区に分散します。同時に、国との窓口は大阪府に吸収されるでしょう。大阪市の実情を踏まえて国と協議や協議を行うことは、難しくなります」(谷口さん)