外国人観光客はもう来ない!?国内市場に舵を切った台湾人ホテル経営者信楽焼の浴槽を新たに設置。浴室からは富士山が眺められる  撮影:薛森唐氏

新型コロナウイルスが直撃するまで、日本は空前のインバウンドバブルに沸いていた。外国人観光客をターゲットにした各地のホテルは、中国や東南アジアからの団体旅行客でごった返していたが、コロナによって全てが一変した。富士山麓で大型ホテルを経営する台湾出身の社長は、15年経営したインバウンド事業を見直し、ホテルの方向転換を決意した。(ジャーナリスト 姫田小夏)

インバウンドバブルから一転したホテル経営

 台湾出身のオーナーが富士山麓で経営する大型ホテルは、新型コロナウイルスが流行するまでは、全177室の客室の予約がびっしり埋まっていた。

「2019年11月から2020年1月にかけて、当ホテルは過去最高の売り上げを記録していたのです」と振り返るのは、富士美華リゾート(静岡県小山町)代表取締役社長の薛森唐(セツ・シントウ)氏(63歳)である。

 これは同ホテルに限ったことではなかった。旧正月の元日に当たる1月25日を前後して、富士山周辺の多くのホテルが100%近い稼働状況となっていた。春節後は売り上げが50%ダウンするのが通常だが、同ホテルは2月15日まで予約でいっぱいだった。

 ところが、その好況も一瞬にして凍り付いた。1月23日、コロナの感染拡大で武漢市がロックダウンされると、中国政府は1月27日から中国人の海外への団体旅行を禁止した。日本では翌日から客室の全面キャンセルが相次ぎ、2月1日以降、同ホテルの宿泊客はゼロとなった。青天のへきれきとはまさにこのことだ。