ソニー,盛田昭夫
ソニー創業者の盛田昭夫氏。昔の経営者は、今の経営者と「かっこいい」の質が違っていた Photo:Kurita KAKU/gettyimages

文芸春秋に入社して2018年に退社するまで40年間。『週刊文春』『文芸春秋』編集長を務め、週刊誌報道の一線に身を置いてきた筆者が語る「あの事件の舞台裏」。不思議な縁から始まったソニー創業者・盛田昭夫氏との交流秘話を明かす。(元週刊文春編集長、岐阜女子大学副学長 木俣正剛)

ソニー創業者との縁は
文芸春秋の「悪口」から

 ITの時代になって、若くて金持ちで芸能人と交際するのがカッコイイ経営者像になりました。私などは、あまり仕事も酒席も共にしたくない感じの人々です。昔の経営者は違っていました。

 世界のソニーをつくった盛田昭夫さんとは、不思議な縁で知り合いました。

 私が担当していた『月刊文芸春秋』の経済コラムで何度か盛田さんの悪口が掲載されました。すると、ソニーの広報にいらした黒木靖夫さん(ウォークマンの開発者)が突然、編集部に現れました。「木俣さん、盛田と会いませんか?」。記事の文句など一切なし。「世界のモリタ」に会えるのですから、異存などあろうはずはありません。

 呼ばれたのは、東京・六本木にある盛田さんの個人事務所。その事務所でランチをしながら懇談しようというお話でしたが、「木俣さん、待たせてすみません。申し訳ないけど、5分電話する時間をくださいね」と明るい声で電話をかけ始めました。

「○○さん! 今、東欧のある国の交響楽団のコンサートを聞いてきたんです。で、そこの団員の1人が片方の耳が不自由なんですよ。その人のために、片方の耳でも聞こえるウォークマンがつくれないかなあ」