5月に入り、国内自動車各社は新型ミニバンの投入ラッシュだ。トヨタ自動車はフルモデルチェンジしたアルファードとその兄弟車となる新型車ヴェルファイアを2車種同時に発売。マツダは今夏発売予定のビアンテを発表した。ほかにもホンダは29日に、富士重工業も自社開発では初となるミニバンを来月17日に発表する。
販売促進にも熱を入れており、トヨタは初の試みとなるバーチャル新車発表会を実施した。「インターネットのなかでもクルマを持つ楽しさ、興味をもっと持ってもらいたい」と、アバター(分身姿)で呼びかけるのはトヨタの豊田章男副社長。ネット上の3次元仮想都市「トヨタメタポリス」で、副社長と直接会話ができるとあって、一般ユーザーからの応募倍率は5倍と好評を博した。
足元の国内市場の現状を見てみれば3年連続の減少、今年以降も市場の拡大は見込めず、自動車離れに拍車がかかる一方だ。トヨタの渡辺捷昭社長は「若い人のクルマ離れは顕著になりつつあり、なんとかして食い止めなくてはならない」と危機感を募らせる。ネットを使った新たな販促戦略からもその思いは見て取れる。
そんななか、新型ミニバンに力が注がれるのには、燃費のよさなどから安定した需要がある小型車以外で、売り上げが見込めるのはもはやミニバンしかないという背景がある。ミニバンは小型車よりも値段が高く、利幅も大きい。
しかも、さまざまなオプション装備を見込める。「フィットのナビ装着率は20%前後だが、ステップワゴンだと70%にも上る」(ホンダ関係者)。販売店にとってもメリットは大きい。「革張りシートで最高100万円上乗せできる」(ディーラー関係者)。収益性の高いミニバンで国内事業の活性化を図りたいというのが、各社に共通した願いなのである。
しかし、揃いも揃ってミニバンに頼らざるをえないというのは、国内自動車市場の“手詰まり”の深刻さを端的に表しているともいえる。
(『週刊ダイヤモンド』編集部 柳澤里佳)