試合が始まると、少なくとも周囲の横浜ファンは当初、ルールにのっとった応援に徹していた。トランペットで演奏する各選手の応援歌はスピーカーから流し、スタンドの観客は両手をたたいて拍手で思いを伝える。9回までこれを続けて、手が痛くならないのだろうかと心配になった。

 阪神ファンのスタンドでは、笛と太鼓、メガホンをたたいての応援で、まだこの頃は、観客の掛け声は聞こえてこなかった。

 ただ、スポーツ観戦であるから、やはり無意識に声は出てしまうもの。1回裏、横浜の2番ソトが先制ソロ本塁打を打った時は“大きな拍手”だったが、3回裏に2打席連続となるソロ本塁打を放つと、周囲の横浜ファンから「おおー」と歓声が上がった。

マスクをずり下げて話す観客の姿も
アプリは任意のため効果が不十分

 また、スタンドで野球を見ながらビールを一杯、ついでにピザやから揚げを頬張るのは至福のひと時だが、実証実験においてこれらが制限されるわけではもちろんない。いわゆる「売り子」の女性がビールタンクを背負って飲み物を売り歩く。

 タンクには「PayPay」「auPAY」のタグが貼られている。感染予防のために推奨されるキャッシュレス決済が可能なようだが、周囲の観客を見る限り、現金決済ばかりだった(下写真)。売り子の女性たちはビニール手袋を装着し、お釣りを渡し終える度にウエットティッシュのようなもので手を拭いていた。

現金決済が多いPhoto by S.O.

 スタンドでは観客に対し、食事中以外のマスク着用が求められていた。食事中は外さざるを得ないのは当然だが、飲んで、食べて、試合を見て、そこで応援しているチームの選手がホームランやヒットを打てば、声も出る。マスクをあごまでずり下げたまま仲間と話し、歓声を上げる客の姿も複数あった。こればかりは止められないであろう。

 さて、今回の実証実験のウリの一つは、観客がトイレや飲食店の混雑状況についてアプリで分かる仕組みだ(下写真)。

 記者ももちろん、LINEを通じて「ハマスタ技術実証アカウント」をダウンロードした。だが、アプリそのものも実験中だったのか、機能は十分に発揮されなかったらしい。

 朝日新聞は10月31日付朝刊で、朝日記者が実証実験1日目の30日に公衆衛生学の専門家である国際医療福祉大学の松本哲哉教授と共に現場を取材した記事を掲載している。その時に問題視した箇所として、アプリでは空いていると表示された食品を扱う売店に、実際には30人ほどの客が並び、混雑していたという問題を指摘している。